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W杯まで2年…ラグビー日本代表の“真の現在地” 足りない「23人の総合力」、起こる選手拘束の綱引き

練習で指導するギャリー・ゴールドAC(左)【写真:吉田宏】
練習で指導するギャリー・ゴールドAC(左)【写真:吉田宏】

ポジティブな要素は…選手の経験値アップと防御面の進化

 ポジティブな面を見ると、TDは先に指摘した選手の経験値のアップと同時に防御面での進化を挙げている。

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「ディフェンスに関しては、エディーも取り組まなければいけない部分と話していますが、そこはギャリー(・ゴールド・アシスタントコーチ=AC)が入ってきていいスタートが切れていると思います。オーストラリア戦でのゴール前での粘り強さなど、簡単にトライを獲られなくなっている。システムをしっかりと構築してくれたので、そこを向上させてくことが来年以降に繋がっていくと思います。ただし、エディーも(総括会見で)語っていたように、セットプレーの安定と、あとは空中戦のところは伸ばしていく必要がある」

 ディフェンス面で粘り強さが見えてきたのは大きな収穫だ。海外遠征中の練習でのタックルセッションを見ると、今秋就任した元コベルコ神戸スティーラーズHCのゴールドACが、実戦モードのメニューを積極的に選手に科していた。永友TDは「(タックルの)ベースとなるコンタクトレベルを上げようという意識はすごく高い。コリジョンの起こるところで実戦に近い練習をやりたがるコーチだが、ここは代表チームにとっては非常にプラスになっている」と評価する。

 このタックル、防御面でベースとなるのは接点でのフィジカリティーだが、ここも同TDは所属チームでの取り組みの重要性を訴える。

「必要な体作りの部分は、代表合宿期間だけやってもしようがない。チームに戻った時も継続的に取り組んでいくことが重要です。ここは代表と所属チームが連動しながら、どこまで高めていけるかが重要になる。来シーズンはネーションズチャンピオンシップ(日本も参加する世界トップ12か国によるトーナメント)もスタートして、テストマッチが増えていくでしょう。リーグワンの試合数も増えているので、トータルのウェルフェア(福利厚生)も考慮しながら、TDとして選手、所属チームとのコミュニケーションを密に取っていきたい」

 代表とチーム間の連携、情報交換・共有をさらに高めることで、代表を離れた選手がテストマッチで戦うために必要なものを積み上げられているかを把握して、不足なものをどう補うかは、TDとしても重要な取り組みになる。

 W杯へ向けて、ピッチ上での取り組みと同時に無視できないのが選手選考だ。セレクション、つまり人事権はHCの特権事項だ。エディーはここまで世代交代に重きを置いてきたが、TDという立場からはHCとはすこし異なる考え方も明かしている。

「基本的に、いま日本代表が目指しているものは間違っていないと私は思っています。でも、足りないところは沢山ある。この足りないものの中でキーになってくるのは、ベテラン、経験のある選手の力かなと思っています。今季を見ても先発15人なら十分戦えるが、23人で戦うとなった時にまだ劣っているところはあります。23人の総合力で戦うとなると、その劣っているものを補うのがやはり経験のある選手だと思っています。彼ら(経験者)の力が上積みされていくと、目指すラグビーが出来るのではないか。勿論、コンディションの整っていない選手は呼ぶわけにはいかない。そこは、来季どこまで選手がコンディションを整え、準備してきてくれるかにかかっています。なので、今季のリーグワンで、彼らがどこまでいいコンディションで活躍出来るかは見ていきたい」

 エディー自身もベテランを排除すると主張している訳ではない。経験値の高いメンバーが少ないことについて、総括会見でも「(コンディションが)フィットしていれば選考対象だ」と語ったが、これは怪我などによるまさにフィジカルな理由と同時に、メンタルのコンディショニングも踏まえてのものだろう。永友TDもインタビューでは「コンディショニングというのはフィジカルとメンタル両面があると思う。選手本人たちに、どうそこを意識してもらえるかが大事」と指摘している。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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