伊藤雅雪は井上尚弥に続けるか― 異色の王者が勝利の先に見据えるロマチェンコへの道
「子どもたちの夢に、ほかの選手たちの目標になれればいい」
かつて、K-1や、PRIDEの全盛期。大晦日といえば格闘技だった。年末のリングを沸かせる魔裟斗に、“KOダイナマイト”内山高志に憧れた男が同じ舞台に上がりスポットライトを浴びた。だからこそ、自身が感じ始めた使命を口にする。
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「夢は見せたいですね。ボクシングは本当に難しいスポーツだと思う。ボクシングだけで食べていくのは正直大変です。世界王者になって稼ぐ額も少しずつ変わってきた。そういうところでも、子どもたちの夢になれればいいなと思います。ボロボロになって勝っても、世界王者としてふさわしくないような生活をしていたりすると寂しいですし。子どもたちだったり、ほかの選手たちの目標になれればと」
年末のリングで初防衛を果たし、へリングとの防衛戦では2度目の米国のリングに上がる。そしてその先には確かなターゲットを捉えている。戦ってみたい相手は? と問うと、間髪入れずにこう答えが返ってきた。
「ロマチェンコですね。あそこに絡んでいくような日本人は自分の中では夢のようなこと。そこを見ていかないと面白くない。そこに行くために海外でアピールしなきゃいけない。ロマチェンコの対象になるような選手にならないといけない。少しずつ、名前は売れてきて、伊藤というのがいるというのは認知されてきた。ここでどんな試合をするかは本当に大事になる」
4月12日に米最大手プロモーターのトップランクと3年間の提携契約(1年間に3戦)を結んだことを発表した。伊藤のスタイリッシュなボクシングスタイルが、現地でも認められているからこその契約。1階級上の統一王者と同じプロモーターになったことの意味は小さくない。伊藤は声を弾ませる。
「ロマチェンコへの道? 長くないんじゃないかと思っている。階級を戻してくるという話もありましたし、トップランクはWBOに強いというのもある。僕の方に来る可能性は十分にあります。
僕が生き残っていれば、遠くない未来に対戦できると思っている。そこが今後の人生のキーになる。もしも決まるなら、人生のハイライトになる可能性が高いですね」
ロマチェンコとのタイトルマッチ――。運命のV2戦をクリアした先に見えるもの、それはもはや夢ではない。
(THE ANSWER編集部・角野 敬介 / Keisuke Sumino)