ラグビー日本代表に“新参謀”入閣か 最右翼の名前は…確保した世界12位→W杯8強突破への道程

キックマネジメントに進化 2年後へ向けた大きな1歩
齋藤の名前を挙げて称えた李自身も、試合を重ねる毎にキックのマネジメントで進化を見せていた。「自分たちのプランでプレー出来なかった」というコメントに関しては、エディーが「ゲインラインで仕掛けるキープレーヤーがいなくなってしまったことで(アタックラインが)流れてしまった」と後半開始直後のCTBチャーリー・ローレンス(三菱重工相模原ダイナボアーズ)の負傷退場を指摘しているが、このアクシデントにも冷静に失点の恐れが高まる自陣からはしっかりとキックで陣地を取っていくエリアマネジメントが光った。この9番、10番のキックを使ったゲームを組み立てる力が、ツアー唯一の勝利をもぎ取る大きな要因になったのは間違いない。参考までに植田について触れておくと、ダブリンの練習でのハイボールのキャッチメニューでも、捕球体勢やジャンプするタイミングの取り方に独特の上手さを感じさせた選手だった。
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李のキックに関しては、ラストワンプレーで逆転負けしたウェールズ戦後のコラムで指摘したプレースキックを、次戦で見事に修正して勝負を決めるまでに安定感を見せたことも称えたい。本人もジョージア戦後の取材対応で、この2試合をこう振り返っている。
「プレースキックについては、先週本当に悔しい結果に終わってしまって、正直、技術というよりはメンタルのところすごい大きく影響したなと、先週の振り返りでしっかり理解していた。決めないといけないと思って力んでしまった部分があった。今週はブーイングなどのすごいアウエーの雰囲気がありましたが、しっかりとキックをどう蹴るのかとかに集中して、自分のルーティンで蹴ることが出来た。前半から本当にあたりも良くて思い描いた弾道で飛んでいたので、最後のキックはこれ入れたら勝てるという考えは一切せずに、どういう弾道で蹴るか、そういうところだけしっかり意識していた」
世界の趨勢を見れば、日本代表のキックマネジメントも、かろうじて世界トップ10クラスの最後尾に辿り着いたというレベルかもしれない。だが、世界トップクラスのゲームでは、この10年近くで着実にゲームを支配するための大きなポイントになっているエリアだ。そこで、なんとか戦える要素を見せ始めたことは、2年後へ向けた大きな1歩と認めていい。そして、キックマネジメントと同様にツアーで進化を印象付けたのが防御だろう。
ゴール前でのパワー勝負で簡単にスコアを許すなど、淡白な失点もまだ露呈する一方で、相手FWによる密集戦、ラインアタックなどで、日本の防御に粘り強さが見えてきているのもこのツアーでの収穫だ。ジョージア戦では、開始直後にFW中心に接点で重圧をかけてきた相手を8次攻撃まで有効なゲインをさせない防御で、結果的にキックミスに繋げている。10分のCTBディラン・ライリー(埼玉WK)の個人技によるトライも、自陣ゴール前のモールおよびFW戦での粘り強い防御が起点となった。真骨頂は後半15分過ぎの自陣22mラインを跨いだ18次フェーズを守り切った組織防御だろう。
1対1でのコンタクトの弱さ、フィジカルの不利をダブルタックルなど人数をかけた防御で補い、より組織で戦う意識が高まってきた。今回のツアーは1試合平均16.3と得点面では日本伝統のアタックは不発に終わったが、防御面では1点差で敗れたウェールズ戦での失点24(3失トライ)、2点差で競り勝ったジョージア戦での同23(2失トライ)と、ティア2およびティア1最後尾というレベルの相手には渡り合える感触も掴んだはずだ。個人ベースのデータにはなるがタックル成功率を見ても、80%台半ばなら「勝ち試合」ともいわれる中で、南アフリカ戦82%(対戦相手の成功率91%)、アイルランド戦89%(85%)、ウェールズ戦81%(90%)、ジョージア戦92%(91%)と若干の波はあるが安定感は見えてきている。
攻撃面の物足りなさを、アタックコーチが不在という現状も併せて指摘する声もあるが、テストゲームに勝つための基盤となる防御の整備、そしてキックマネジメントなどにようやく光明が見え始める中で、来季からアタック面にブラッシュアップをかけて、今季以上に「勝てるチーム」へと進化出来るかが勝負になる。
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