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「引退」よぎる敗戦から407日、井上拓真が神童を止めるまで 父、会長も唸る「過去イチ」の再起

勝利後、家族らと記念撮影をした井上拓真(左から2番目)【写真:山口比佐夫】
勝利後、家族らと記念撮影をした井上拓真(左から2番目)【写真:山口比佐夫】

「そう長くないボクシング人生を後悔せずにやりきりたい」

 格闘技キャリア54戦無敗の“神童”との王座決定戦。ボクシング歴は勝るが「ここまで昇りつめているので実力もある。相手に申し分ない」と油断はなかった。「初黒星をつけることが一番のモチベーション」とたぎらせ「過去イチ」との仕上がりで決戦に臨んだ。

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 父の真吾トレーナーは「拓真がプロになってから初めてというくらい同じ思い、気持ち、温度でトレーニングができました。全部リミッターを外しました」と過酷なトレーニングを振り返った。陣営の大橋秀行会長も「拓真がジムに来て13年以上経ちますが、一番集中して、気合が入って、勝ちたいという気持ちがひしひしと伝わってきました」と太鼓判を押した。

「そう長くないボクシング人生を後悔せずにやりきりたい」

 試合前にこう口にしていた井上。12回終了のゴングを聞くと、リングのコーナーに立って渾身のガッツポーズ。雄叫びを上げた。「天心選手相手だからこそ、ここまで追い込めて仕上げてこられた」。自身を高めてくれた那須川に感謝し、握手を交わした。グラブを吊るすことも考えた敗戦から407日。ボクシングへの想いを取り戻した王者は、その拳で新しい未来を切り開く。

(THE ANSWER編集部・澤田 直人 / Naoto Sawada)

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