痛恨の“残り0秒敗戦”はなぜ起きた 判定の疑念より…ラグビー日本が露呈した「深刻な問題」

SH齋藤が感じた精度の低さ「エクスキューション(遂行力)のところ」
日本のファーストトライは、このツアーでもベストに近いものだった。15分に自陣からの日本のパントをウェールズが処理できなかったところを、CTBディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、HO佐藤健次(同)が繋いで22mラインを突破。これを起点に、早い展開で右に大きくボールを運んでFB矢崎由高(早稲田大3年)とWTB石田吉平(横浜キヤノンイーグルス)の連携で仕留めた。トライ前に既にウェールズが日本のスピ―ドに反則を犯して、アドバンテージをもらう中でのトライだった。
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随所に日本らしさを見せながらの展開。前半のスタッツをみても、地域支配率(テリトリー)68%、ボール保持率(ポゼッション)53%と優位に立つ。それでもイーブンでの折り返しとなったのは、ここまでの試合と変わらない課題が響いた。
最初に敵陣ゴール前に迫ったアタックでは、6次攻撃したがラックのボールをコントロール出来ずに終わった。10分のウェールズ陣10mラインでの左オープンもパスが乱れて自滅。直後の敵陣でのクイックスローで相手の意表を突いたが、仕留めのキックパスをコントロールし切れなかった。22分の矢崎の好走からのトライチャンスも、ラックでボールを奪われて潰した。先に紹介したテリトリー、ポゼッションもだが、敵陣22mライン内に攻め込んだ回数でも前後半通算で12対6とスタッツ上では「優位」なはずが、ここまでの試合でも露呈したプレーの精度の低さ、遂行力の低さでリードを握るまでに及ばない。
実際にピッチでプレーしていたSH齋藤直人(スタッド・トゥールーザン)も、この精度の低さを指摘する。
「当たり前のことですけれど、試合中選手は常に集中はしてはいます。けれどその中で、ここが本当にチャンスだとか、ここでスコアすることで試合の流れを持ってこられるとか、そういう認識を全員で出来れば。ここは共有出来ていないということじゃない。そこでのエクスキューション(遂行力)のところ(が課題)だと思います」
一見すると日本がよく食らいついた試合とも見える。だが、実際には、優位に立てたゲームを、自分たちが未だ修正し切れない課題のために息詰まる接戦にしてしまい、ラストワンプレーで勝利を逃す幕切れにしてしまった。
もう一点、勝ち切れなかった要因は2本のPG失敗だった。今季安定感を高めているSO李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)だが、前半28分の右中間39m、前半インジャリータイムの右44mと2本のゴールを失敗。2本目は角度のないタッチライン際ではあったが、相手のSOエドワーズは後半同じような角度をしっかりと決めて1点差の勝利に繋げている。成長著しい李には酷な指摘だが、1点差の敗戦という現実を踏まえれば、テストマッチのキッカーとしては期待には応えられなかった。
後半20分以降は4度リードが変わる息詰まる展開になったが、ここでも「精度」と同様にこれまでも課題だった「ディシプリン」が響いた。23分の相手のトライは、日本が自陣ラックを作った時の何気ないプレーがオフフィート(倒れた状態でプレーする反則)を取られ、そこから相手FWの連続攻撃で奪われている。
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