[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

痛恨の“残り0秒敗戦”はなぜ起きた 判定の疑念より…ラグビー日本が露呈した「深刻な問題」

ラグビー日本代表は現地時間11月15日に行われた「リポビタンDツアー2025」第3戦でウェールズ代表に23-24で敗れた。敵地カーディフでの息詰まる戦いは、残り14分で逆転に成功したがロスタイムのラストワンプレーで反則を犯し、相手の逆転PGでツアー初勝利を逃した。12月に行われるワールドカップ(W杯)2027組み合わせ抽選会でのシード分けにも影響する黒星になったが、世界ランキングで1つ上(12位)の相手とは互角に渡り合った。No8リーチマイケル(東芝ブレイブルーパス東京)ら主力を欠く敵地戦で勝利を掴みかけたチームの成長と、勝利を掴み切れないチームの現状を検証する。(取材・文=吉田 宏)

日本がラストワンプレーで逆転負けを喫したウェールズ戦を検証する【写真:JRFU】
日本がラストワンプレーで逆転負けを喫したウェールズ戦を検証する【写真:JRFU】

ラストワンプレーで逃したツアー初勝利 世界ランク12位ウェールズ戦の検証

 ラグビー日本代表は現地時間11月15日に行われた「リポビタンDツアー2025」第3戦でウェールズ代表に23-24で敗れた。敵地カーディフでの息詰まる戦いは、残り14分で逆転に成功したがロスタイムのラストワンプレーで反則を犯し、相手の逆転PGでツアー初勝利を逃した。12月に行われるワールドカップ(W杯)2027組み合わせ抽選会でのシード分けにも影響する黒星になったが、世界ランキングで1つ上(12位)の相手とは互角に渡り合った。No8リーチマイケル(東芝ブレイブルーパス東京)ら主力を欠く敵地戦で勝利を掴みかけたチームの成長と、勝利を掴み切れないチームの現状を検証する。(取材・文=吉田 宏)

【注目】日本最速ランナーが持つ「食」の意識 知識を得たからわかる、脂分摂取は「ストレスにならない」――陸上中長距離・田中希実選手(W-ANS ACADEMYへ)

 ◇ ◇ ◇

 残り0秒での敗戦に、百戦錬磨のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)も表情を強張らせた。

「ひどい気分です。最後の5分、10分がどんな気分かと聞かれたら、誰かを殺したいくらい。それは冗談としても、最後の5分までリードしていたにも関わらず、その状況をハンドリング出来ず、リードを守り切れなかった」

 失ったものは1勝よりも大きかった。世界ランク1、3位に挑んだここまでの2試合は同13位の日本にとってはいわば胸を借りるゲームだった。それに対して同12位、7月に日本で1勝1敗のウェールズは倒すべき相手だった。

 同時に、12月に行われる2年後のW杯組み合わせ抽選会へ向けても勝利が求められた試合だった。世界ランク12位以内のチームが優位な組分けに振り分けられるため、現在13位の日本が順位を上げるためには、ウェールズ戦は絶好のチャンスだったが、掴みかけた勝利を自ら手離した。見方次第では前の2試合以上に痛恨の敗戦だった。だが、エディーは敗戦の弁に続いてこうコメントをしている。

「でも、そんな状況の中で嬉しかったのは選手たちがキックオフからしっかりと勝つ気持ちで挑んでくれたことです」

 ゲームは1週間前までとは大きく異なる様相を見せた。開始直後の日本陣でのウェールズの最初の左展開に、日本のライン防御が早い上がりで圧力をかけて前進を許さない。前半の残り15分からは2枚のイエローカード(10分間の出場停止)で13ないし14人での戦いを強いられたが、ボールをFWが保持し続けて時間を稼ぐなどクレバーな試合運びもみせて、前半を7-7で折り返した。防御の奮闘を、PR為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)がこう振り返る。「良くなっていると思うのは、ディフェンスの上がる速さ。ここはチームもずっと意識しているところだし、世界の上位国に対しては、この上がりの速さでプレッシャーをかけることが重要だと思っている」。

 ここまでの2試合で大敗した世界トップ3と、10位台と低迷するチームとの重圧の格差も勿論あるが、日本はシステムを崩さず相手のアタックにプレッシャーを掛け、1度接点で相手とコンテストした選手も、素早く次の防御に備えていたため防御が大きくは崩れない。開始6分で、将来性を期待される相手SOダン・エドワーズのフットワークとボディーバランスを駆使したランでゴールラインをこじ開けられるが、それまでのゴール前の肉弾戦は6次フェーズを守り通した。80分を通しても、防御システムを完全に崩されるシーンは数える程に止め、失点もこの遠征で初めて20点台に抑え込んだ。

1 2 3 4

吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
oillio
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集