好展開も…なぜかスコアに繋がらない “連続大敗”ラグビー日本代表の今、司令塔が指摘した「問題は…」

好展開でスコアに繋がらない原因とは
「前半は相手に17点を先制されてはいたが、僕たちはしっかり巡目にテンポを持ってアタックするところでは、いい手応えを持っていました。10-17で折り返せたことは自分たちの形でいいラグビーが出来ていたと思うが、試合を通してブレークダウンだったり空中戦もそうですが、規律のところで相手にモメンタム(勢い)を与えてしまった。やっているラグビー自体は悪くなかったと思います。しっかり敵陣に入れていたし、問題は精度ですね。セットピースからの精度、1人ひとりの走るタイミングや、コミュニケーションのところを、全員がゲーム展開をしっかり読んで、チームとしての認識を持てるかどうかだと思います」
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成長を続ける司令塔の指摘通りだろう。いい展開を垣間見せながら、なぜスコアに繋がらないのかが、実感を伴って語られている。実際にゲームを見ていても、日本がアイルランドから学ばなければいけないことは多かった。両チームともファンブルボールが多い試合ではあったが、前半10分にミッドフィールドで日本が仕掛けた左オープンで、上手く繋がらずにファンブルしたボールに、セービングで飛び込んできたのは相手SHクレイグ・ケイシーだった。代表キャップはこの試合で22となったが、世界最高のSHの一人とも称されるジャミソン・ギブソン=パークの陰に隠れた存在でもある。
終盤にトライも決めた4キャップ目のWTBトミー・オブライエンも、自慢の華麗なランプレーだけでなく必死に体を張ってルーズボールに飛び込んでいた。5キャップ目のFLニック・ティモニーに31分に奪われたトライは、日本の選手が相手のノックオンだとセルフジャッジしてプレーを一瞬止めてしまったところを、ベテランLOバーンが目ざとく仕掛けたのに素早く反応して決めたものだった。
決して日本の選手が手を抜いているわけでも、真剣勝負をしていないとも思わない。だが、テストマッチで自分が与えられた貴重なプレータイムに、どこまで最高のパフォーマンスを残すかというアイルランドメンバーの必死さがプレーに籠る。集中力を最高レベルまで引き上げ続けて、持っている能力全てを出し尽くそうとしているのかという観点で見れば、スタンドの5万60人の思い、テレビ、オンラインで見つめるアイルランド国民の思いを背負って戦い続けたエメラルドグリーンのジャージーから学ぶべきものは相当あったはずだし、学ばなければならない。彼らが、日本代表がどんな実力の相手か、世界ランク何位かなどとは関係なく、全身全霊を傾けて80分間プレーしたことは、あのスタンドで目撃した人間なら誰でも分かる。
一方の日本は、SO李が語ったように、スピードに乗ったアタックが僅かなズレでも手痛いハンドリング、連携ミスにつながり、相手のフィジカルの重圧から犯すペナルティー、後半12分のプレーに象徴されるチーム内での意思疎通というベーシックなエリアでの未熟さも露呈している。この試合では力強いボールキャリーを見せていたLOウルイヴァイティが、相手22mライン内に前進したプレーでも、無理なパスがスローフォワードとなりチャンスを潰している。このような攻め急いでのミスを見ると、やはり経験値の低い今のチームは、テストレベル、インターナショナルレベルの経験を更に上げていくしかないだろう。
国際的なゲームをあまり経験出来ていない世代が、昨年6月から初めて目の当たりにしたテストラグビーというステージでの戦いや厳しさから、一歩一歩学んでいるのが現実だ。南アフリカ戦明けの取材で若手PR為房慶次朗(S東京ベイ)が、日本でプレーする同国代表勢について「リーグワンの時より2倍強かった」と話したが、結構的を射た話でもある。代表ジャージーを着た選手が、クラブのジャージーの時とは異なる真剣さ、激しさでプレーしていることを、新世代の若手は試合毎に経験し、吸収し、身に付けて、テストマッチとは何かを体で感じ取っている。この作業が、2年後の秋に開幕する世界の舞台で、どこまで積み上げられているのか。現状を見れば、少し強化のスピードを加速させたいと思うのは、誰でも思い浮かぶだろう。
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