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好展開も…なぜかスコアに繋がらない “連続大敗”ラグビー日本代表の今、司令塔が指摘した「問題は…」

ラグビー日本代表は11月8日、アイルランド・ダブリンで行われた「リポビタンDツアー2025」第2戦で同国代表と対戦。世界ランキング3位の強豪に対して前半は10-17と追い上げたが、後半20分過ぎから猛攻を受けて10-41で敗れた。これでテストマッチは4連敗。前節南アフリカ戦(7-61)に続く大敗で力不足を感じさせたが、選手の言葉からはようやく見え始めた自分たちの強みやスタイルへの実感も浮かび上がる。南アフリカ戦に続き、選手、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)の言葉から、エディージャパンの進化の座標を読み解く。(取材・文=吉田 宏)

南アフリカ戦に続く大敗から読み解くエディー・ジャパンの進化の座標【写真:JRFU】
南アフリカ戦に続く大敗から読み解くエディー・ジャパンの進化の座標【写真:JRFU】

10-41で完敗した世界ランク3位アイルランド戦の検証

 ラグビー日本代表は11月8日、アイルランド・ダブリンで行われた「リポビタンDツアー2025」第2戦で同国代表と対戦。世界ランキング3位の強豪に対して前半は10-17と追い上げたが、後半20分過ぎから猛攻を受けて10-41で敗れた。これでテストマッチは4連敗。前節南アフリカ戦(7-61)に続く大敗で力不足を感じさせたが、選手の言葉からはようやく見え始めた自分たちの強みやスタイルへの実感も浮かび上がる。南アフリカ戦に続き、選手、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)の言葉から、エディージャパンの進化の座標を読み解く。(取材・文=吉田 宏)

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 試合途中でほぼ満席となった緑のスタンドの嬌声が、桜のジャージーの15人の上で渦巻いた。ホストチームは、前週アメリカ・シカゴでニュージーランドに13-26と敗れていただけに、秋のホーム初戦へのファンの思いが熱量を高める中での完敗。会見の席で、エディーも悔しさを滲ませながら、敗因をこう物語った。

「非常に残念な結果になりました。前半は勝てるところまでいけたが、相手にシンビン(10分間の一時退場)が出ていた後半最初の10分で優位に立てなかった。チャンスは間違いなくあったが、それをものに出来なかった」

 勝負の綾を、指揮官は2つの言葉で示している。先ずは「ものに出来なかった」こと。再三のチャンス、もしくは継続できればチャンスになる展開まで持ち込みながら、自分たちのミスで何度も攻撃権を失った。そしてもう一点が「後半開始10分」だ。スポーツに“タラレバ”は禁物だが、日本が前半途中から主導権を握りはじめ、相手が14人という好機に逆に失点を許したことで、逆転勝利への流れを掴み切れなかった。

 正確には後半12分だった。10-22のスコアから、23歳の主将ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)が勝負に出た。相手の反則でPKを得たのが右中間21m地点。キッカーのSO李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)の右足ならスコアを13-22に縮める射程圏ではあったが、トライ(ゴール)による17点目を獲りに行った。ゴールポストの間ではなく、ボールをタッチに蹴り出した李が振り返る。

「正直、迷った部分はありましたね。でもワーナーと話して、前半に(トライを)取り切れていたし、相手が1人少ない状況だった。なのでコーナー(ゴール前ラインアウト)から行けると判断しました。でも、ラインアウトはFWの中ではコミュニケーションしていたんですけど、僕とFWの認識が出来ていなかった…」

 前半37分にモールでチーム初トライを奪った日本としては、その強みを奇襲に生かしたかった。今度はモールを押し込まずタッチライン側の狭いスペースを攻めたが、相手選手にボールをもぎ獲られてチャンスを逃した。李は、FWの奇襲にBKが対応・連携出来なかったことを悔やんだが、この失敗を機に、日本はアイルランドのFWによるフィジカル勝負、BKの展開力、キックとアイルランドの多彩な攻撃に防戦が増え、27分以降の3連続トライで突き離された。

 アイルランドは前週のニュージーランド戦から半数のメンバーを入れ替えてきた。それでも先発15人の総キャップ数は526。1人平均35キャップは、20キャップに満たない日本とは大きな経験値の差があった。つまり、何人かの若手にチャンスを与えたが、しっかりとゲームを戦える布陣を用意していたのだ。ここは2019年の苦杯をアシスタントコーチとして経験したアンディ・ファレルHCに抜かりはない。過去の対戦でも日本を苦しめた62キャップのLOタイグ・バーンを始め、メンバー最多の82キャップを持つCTBロビー・ヘンショーら経験豊富な勝負師を投入していた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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