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“ブライトンの奇跡”再現は幻「5mが…」 世界最強・南ア戦、7人の証言から浮かぶラグビー日本代表の課題

日本と世界との断層を物語った場面とは【写真:JRFU】
日本と世界との断層を物語った場面とは【写真:JRFU】

日本と世界との断層「あまり日本でやらないゲームスタイルだった」

 その一方で、キックを陣地取りや自陣からの脱出だけではなく、アタックの術として構築・熟成させてきた、つまりトレンドになったのはW杯で区切れば、この2大会程度の歴史と言っていいだろう。日本代表も2016年に就任したジェイミー・ジョセフHCが攻撃的なキックを導入している。そのトレンドを最も効果的に使っているのが、日本を粉砕した南アフリカだということは過去2度のW杯と現在の世界ランクが証明している。

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 世界王者相手に唯一のトライをPKからの速攻で奪ったFB矢崎由高(早稲田大3年)が、この試合の難しさを語っている。

「ハイボールでのキックゲームになるのは予想していた。全員でそこに対してしっかりカバーしていこうと話していました。そこのフィジカルのところと、マイボールをキープ出来なかったところで反則が続いてしまい、結果的にモールでトライされていた」

 5mの差と同時に、さらに長いキックからでも、日本でも活躍するFBチェスリン・コルビ(東京SG)、この試合のMVPに選ばれたWTBカートリー・アレンゼら快足ランナーに縦横に走られた。本来のFW(バックロー)ではなくWTBで途中出場したティアナン・コストリー(コベルコ神戸スティーラーズ)のコメントが、日本と世界との断層をよく物語っている。

「今日の試合は、あまり日本でやらないゲームスタイルだった。なので、どうやって日本がキックの多い試合に対して対応出来るかというのが一番キーでしたね。リーグワンではどのチームも(ボールを持って)アタックしたがるし面白いラグビーをしていますが、そうだとやはりこういうワールドクラスのチームにこのようなゲームプランをされてしまいます。あまり経験しないスキルを、もっと成長させていかないといけないと思います」

 日本がキックカウンターから何度も攻撃を受けながらも、後半39分にも再びキックを上げて、カウンターによるトライを許している。リーチは「後半はボールを持ってアタックしたほうが良かったかなという思いもあった。空中戦で負けているし……。それもチームの学びでしょう。若いし、経験も少ないチーム。プレーの選択肢の判断のところは、チームとして見直していきたい」と語ったが、どんなプレーを戦況の中で選んでいくかという大きな宿題も突き付けられた。

 勿論、キック処理の差だけでこれほどの大敗になったわけではない。1個1個の接点でのフィジカルコンテストでは重圧を受け続けた。タックル自体も日本の成功82%は巨漢揃いのスプリングボクス相手に酷い数字ではなかったが、その回数がほぼ同じだった中での勝者の92%には差をつけられた。

 福田と共に試合2日後に取材に応じたPR為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)も「接点の強さを一番感じました。(途中出場して)最初の相手のタックルで僕のマウスピースが反応してしまったが、初めてのことでフィジカルの強さを感じた。日本でプレーする選手もリーグワンの時よりも2倍くらい強いんじゃないかと思いました」と振り返る。為房が話したマウスピースは、代表戦やリーグワンでも適用される脳への衝撃を測るために埋め込まれたセンサーが、あまりの衝撃でアラートを発信したことを物語っている。

 数値をみても、地域支配率で日本の42%対58%、ボール保持率46%対54%とスコアほどの極端な差がない中で、22mライン突破回数では日本の5に対して勝者は17と3倍以上の差がついている。攻めても得点圏に入れない日本と、着実にスコアチャンスを創り出した南アフリカの差は明白だった。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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