医大生が選んだプロ選手との兼業「できるのは自分だけ」 1200km離れひとり練習「好きすぎるんです」―アイスホッケー・矢野竜一朗

医大生のハードな日常…1時間半練習のために6時間ドライブ
夏休みだった今年8月、神戸で行われた練習に参加した。「アピールしておきたい、医者になってからの選択肢を広げたいという意味もありました」。身長186センチとサイズに恵まれ、日本のトップレベルの経験もある人材はなかなかいない。8月の終わりには契約が決まった。難問は、学業との両立をどうするかだった。
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「前例がない分、いろいろ問題も出てくるとは思うんです。思うように練習することが難しいですし、実習が始まればどんどん苦しくなるとは思っています。でもこの挑戦をできるのは自分だけですから。後悔したくなかったんですよね」
週末中心に行われる試合のたびに旭川から飛び、チームに合流する生活が始まった。どのくらい試合に出場できるのかも、走り出してみないとわからない。「アジアリーグのレベルの高さは経験しています。不安はなくはないですが、やらなきゃもったいない。文武両道というのは自分で言うものではないですけど、ひたむきに、やれるところまでやってみたい」。
練習さえ簡単ではない。平日は苫小牧まで片道200キロ、往復6時間のドライブで練習に向かう。それでも、母校・苫小牧東で氷に乗れるのは1時間半しかない。「あとは自分でできるときに陸上トレーニングをしたりとか……。メンタルも鍛えられますよ」。アイスホッケーでは、氷上の選手たちが「システム」と呼ばれる約束事をもとに動いている。このレクチャーを受けたのも、開幕前日の夜というドタバタだった。
いずれは故郷の福岡に戻り、医師となるのを目指している。学業だけでも、時間がいくらでもほしい状況だ。それでも競技生活との両立は「すべてのモチベーションにつながる。勉強に関してもそうです。今週末は試合があるから頑張ろうとか、絶対あると思います」。学びへの好影響も信じて、走り出している。
「人生は一回きり。やれるチャンスをいただけるなら挑戦してみようと。自分の可能性を信じて。『大丈夫なの?』という声もありますけどね。一度引退してから、実はなんか物足りなかったんですよ。やっぱり、ホッケーが好きすぎるんです」
矢野は9月21日の開幕2戦目で初ゴールを決め、チーム初の勝ち点に貢献。そしていよいよ、11月1日には兵庫県尼崎市でホーム開幕戦に臨む。医学とアイスホッケーを極めようとする歩みは、これからが本番だ。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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