壊された固定観念「なぜ審判は笛を?」 目指す世界一、日本で広めたい「耳が聴こえない人」のラグビー
スノーボード、野球、陸上など他競技からデフラグビーに挑戦する流れも
もう1人、取材に応じてくれた岡村大晃は、ラグビー選手としてはまだ“2年生”だが、異色のキャリアの持ち主だ。
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「スノーボードを10年くらいしてきました。健常者とも一緒にやりながらデフリンピックも出場しましたが、2年ほど競技を離れていた時に、同級生の仲間から『やってみない?』と誘われて始めました」
2019年のデフリンピックに日本代表として出場。メダルこそ逃したが、スノーボード・パラレル大回転、回転で共に5位と世界トップレベルの舞台で競技を続けてきた。今はラグビーに専念している岡村だが、個人競技で結果を残しながら、相手との接触も激しいラグビーを選んだ理由をこう語ってくれた。
「ずっと同じ動きのスノーボードに対して、ラグビーは状況によっていろいろ動いたりとか、サポートに行ったりとか、やらないといけないことが多くて、すごく考えるスポーツだなと感じています。それが楽しいですね」
まだラグビーを吸収している最中ではあるが、柴谷が「スノボーを続けてきたために、下半身と体幹が強く、吸収も早い。いまはSH、WTBでプレーしていますが、彼の場合はマルチスポーツ(小学生の頃から複数のスポーツを経験させる)環境が影響していると思う」と評価するように、スノーボードで国内、世界最高峰のステージで戦ってきたアスリートとしてのポテンシャルは十分にある。ウインタースポーツとボールを使った格闘技という全く異なる2つの種目で世界の舞台に挑戦する。
他にも野球、陸上などの他競技の経験者がデフラグビーの門戸を叩き始めている。先に紹介したように、大半の聴覚障害者が、健常者のチームでプレーしていることもあり、デフラグビーの国内競技人口は「横這いというのが実情」(柴谷)という。聴覚障害者がスポーツに打ち込む場合は、どうしても陸上、卓球という個人種目が多くなるという現実もある。聴覚が必要な競技、より多くの選手がプレーする競技に比べれば、個人競技のほうがやり易いことが大きく影響している。デフアスリートにとってはハードルが高いラグビーだが、来年の世界大会開催、その後の強化を視野に入れて、柴谷をはじめとした関係者は、他競技で活躍するアスリートも含めて積極的な勧誘活動も展開している。
1年後の開幕を待つ世界大会へ向けての強化もテコ入れが進んでいる段階だが、柴谷は目標に掲げる世界一を掴むための課題に「環境」を挙げる。
「強化面では、9月最初の合宿ではディフェンスに取り組んで、そこからアタックもやっていこうという流れですが、ここは時間がかかります。まずスキルを高めなきゃいけない。そこから戦術が入って来る。今の練習時間だと(アタック強化は)なかなか難しい。なので平日の夜の練習を出来るようにしたり、代表メンバーが内定という段階になれば、選手が所属する会社に時短出勤などの相談、お願いもしていく必要があると思っています」
代表チームとしての活動が本格的に始まる来年2月からは、従来続けてきた月1回の週末を利用した強化合宿の日数をさらに増やしていく。
「今までは1回の合宿は(週末の)2泊、3泊が多かったけれど(来年は)もっとやります。連休も多いので、それも使って5日間くらいの日程でやっていきたい。ゴールデンウイークもあるので、しっかり休日を使っていきたいですね」
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