バイク事故で3週間寝たきり→五輪へ 「脳は損傷、膝は潰れたが…」無名ランナーの道を拓いた信念【東京世界陸上】
9月に国立競技場で行われた陸上の世界選手権東京大会。9日間の熱戦を現地取材した「THE ANSWER」は、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「東京に集いし超人たち」を展開する。第25回は「大怪我からのカムバック」。男子1500メートルに出場した31歳のエリオット・ジャイルズ(英国)は20歳の時に交通事故で選手生命の危機に陥る大怪我を負った。3週間ほど寝たきりの状態から復活し、五輪に3大会連続で出場。奇跡のカムバック劇にあった不屈の精神を聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

東京世界陸上連載「東京に集いし超人たち」第25回
9月に国立競技場で行われた陸上の世界選手権東京大会。9日間の熱戦を現地取材した「THE ANSWER」は、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「東京に集いし超人たち」を展開する。第25回は「大怪我からのカムバック」。男子1500メートルに出場した31歳のエリオット・ジャイルズ(英国)は20歳の時に交通事故で選手生命の危機に陥る大怪我を負った。3週間ほど寝たきりの状態から復活し、五輪に3大会連続で出場。奇跡のカムバック劇にあった不屈の精神を聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
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「長い道のりだったね」
4度目の世界陸上を走り終えた31歳は、遠い目で11年前のあの日を振り返った。大学1年目を終えた2014年7月。英バーミンガムでバイクに乗っていたジャイルズは車と衝突し、気が付けば病院のベッドに横たわっていた。
「3週間はベッドから動けず、そこから3週間はちょっと気味の悪い状態だった。脳にダメージがあり、後十字靭帯は断裂。腰や臀部も負傷した。いまだに臀部の形は崩れたままだし、片方の膝もつぶれたまま。腰の痛みも時々再発する。脳は回復したと思っているけど、ああ、いろんな過程があったよ」
選手生命の危機。まずは歩き方を思い出さなければならない。「医師は私がまた競技で走ることになるとは思っていなかった。でも私は恐れ知らずで、愚かなほどに頑固だったんだ」。復活を目指し、懸命にリハビリ。半年ほどでゆっくりジョギングできるようになった。15年5月にようやく大会に復帰。16年7月には初の欧州選手権で男子800メートルの3位に入り、リオ五輪への切符を手にした。
3大会連続で五輪の舞台に立ち、世界陸上も17年ロンドン、19年ドーハ大会に800メートルで出場。23年ブダペスト大会からは1500メートルに種目を変え、今回が4度目の出場だ。陸上を辞めていてもおかしくない大怪我から、なぜ諦めずにここまで来られたのか。
「諦めるという選択肢はなかったんだ。辞めることなんて考えたこともない。常にトレーニングし続けることを考えていた。当時はプロ選手でもなかったし、英国代表でもなかった。いい選手だとも思われていなかった。そこから夢にも描いていなかった五輪にたどり着いた。何がこの信念を与えてくれたのか分からないけど、心の中では本当に自分ならできる、対応できると信じていたんだ」
当時は無名の選手。根拠のない自信でもいい。とにかく自分を信じること。暗中模索のリハビリを乗り切るためにはそれが必要だった。
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