巨額赤字の日産自動車、社長が復活野球部に伝えた「次のシーズンは…」 日本独特の企業スポーツが生む“価値”

チーム存続に求められる価値…応援席で拳を振り上げた社長
日産は8安打を放ちながら奪ったのは1点だけ。塁に出ることはできたが、走者をうまく進められずに終わった。7月の都市対抗予選で最後の東京ドーム行き切符をかけ、東芝に敗れた時も同じだった。強豪相手に、何とかついていくことはできる。ただリードを奪うまでには至らない。そのうちに点差を広げられてしまうのだ。
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伊藤祐樹監督も「単打は出ている。この中に長打があると2、3点取れていたんでしょうけどね。相手の投手がベテランで、勝ち方を知っている感じがありましたね。点を取られない投球をされてしまった」と、流れをコントロールされてしまったことを悔やむ。
日産の22選手は、この春大学を卒業したルーキーばかり。唯一社会人野球の経験があるのも、茨城日産で1年プレーして転籍してきた石毛だけだ。首脳陣には、休部前の強い日産をつくってきた名前が並ぶが、チームとしての経験不足は否めない。伊藤監督も、1年目の成果と課題をはっきり口にする。
「新人ばかりが集まったにしては、形になったと思いますよ。ただやっぱり最後の勝負になったとき、引き出しが少ないんですよね。こういうバッティングをしようと気づいて工夫したりね」
会社に変化が求められる中で、野球部がその先頭に立つべく戦ってきた。チームの維持にもお金がかかる以上、何らかの価値を生み出さなければ存続はおぼつかない。幸い従業員の関心は、他の企業チームに比べ格段に強かった。石毛は「野球部のおかげで、仕事する楽しみが増えたと言われます」と会社での反応を明かす。一人一人は新入社員でも、野球部という集団になると会社を動かすパワーが生まれる。
この日も川崎市の等々力球場では、ホンダ側を圧倒する観衆が一塁側スタンドを埋めた。その中でエスピノーサ氏も拳を振り上げ「GO日産!」と応援コールを何度も口にした。日本独特の文化“企業スポーツ”が生む価値、苦境の会社を前進させるエネルギーを感じたのではないだろうか。
16年前の休部を、選手として経験した伊藤監督は「従業員と野球部が一体になって戦うという部分では、本当に大きな一歩です。会社が厳しい状況で、社長に背中を押していただいた」とトップの登場を重く受け止めている。復活2年目はさらにチームの価値を最大化すべく、全国大会進出という結果をつかみに行く。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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