「僕らは地球代表だ」世界陸上を走った6人の難民選手団 紛争に追われる1.2億人、叫ぶ「同じ人間だ」の意味

深刻化する難民問題…それでも「僕たちも同じ人間なんだ」
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、国境を越えて他国に避難する「難民・庇護希望者」は昨年末時点で全世界に5000万人以上。国内で自宅を離れて避難生活を送る「国内避難民」を含めれば約1億2300万人が、紛争や迫害により、避難を余儀なくされている。
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現時点で考えられる解決方法は非現実的だ。「母国へ帰ること」は紛争や人権侵害が根絶されなければ難しい。「周辺国での定住」も限度がある。そして、「第三国での定住」は手続きが難航する場合がほとんど。問題は山積みだ。
だからこそ、難民アスリートが世界中の注目を集める舞台に立つことには意味がある。女子800メートルに出場した南スーダン出身、22歳のペリーナ・ロクレ・ナカンは「世界中の人々が、私が難民を代表するところを見ている」とARTを背負う意義を強く実感する。
「多くの人が待ってくれているの。いつか、ARTは世界でも最も大きなチームの一つになる。ここに難民なんて存在しないわ」

17歳の頃、紛争により母国コンゴ共和国を追われた30歳のキルフラ・エマニュエル・ンタグンガ。棄権者が続出した男子マラソンで39位と奮闘した“難民の星”は「未来に希望を持てない人々に希望を与えたい」と1億2300万人に向けてメッセージを送る。
「ARTでプレーできることをとても嬉しく思っている。世界中の難民たちも勇気づけることが出来るから。僕たちも同じ人間なんだ。難民だからといって諦める必要はない。やりたいことは何でもできる」
母国の威信をかけた世界陸上で戦った6人の難民選手団。国旗のない黄色いユニホームに彼らは何を背負い、走っていたのか――。それは、故郷を追われた数千万の人々の希望であり、「難民も同じ人間だ」という誇りでもあるのかもしれない。
問いかけに、ンタグンガは迷いなく答えた。
「僕たちは地球を代表しているんだよ」
(THE ANSWER編集部・戸田 湧大 / Yudai Toda)
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