[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

「この国を有名にしたい」 たった1人で“謎の小国”ベリーズから世界へ、18歳の少女が国立で見た景色【東京世界陸上】

陸上の世界選手権東京大会は21日まで国立競技場で熱戦が繰り広げられた。2007年の大阪大会以来18年ぶり3回目の日本開催。現地で取材した「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「東京に集いし超人たち」を届けていく。第20回は「小さな国を1人で背負った18歳の少女」。女子100メートルに出場したニーシャ・ハリスは中米カリブ海の小国ベリーズから唯一の選出。13日の予選は12秒25(無風)の組8着で敗退となったが、誇りを胸に世界の舞台を駆け抜けた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

小国ベリーズから唯一の選出で女子100メートルに出場したニーシャ・ハリス【写真:中戸川知世】
小国ベリーズから唯一の選出で女子100メートルに出場したニーシャ・ハリス【写真:中戸川知世】

東京世界陸上連載「東京に集いし超人たち」第20回

 陸上の世界選手権東京大会は21日まで国立競技場で熱戦が繰り広げられた。2007年の大阪大会以来18年ぶり3回目の日本開催。現地で取材した「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「東京に集いし超人たち」を届けていく。第20回は「小さな国を1人で背負った18歳の少女」。女子100メートルに出場したニーシャ・ハリスは中米カリブ海の小国ベリーズから唯一の選出。13日の予選は12秒25(無風)の組8着で敗退となったが、誇りを胸に世界の舞台を駆け抜けた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

【注目】日本最速ランナーが持つ「食」の意識 知識を得たからわかる、脂分摂取は「ストレスにならない」――陸上中長距離・田中希実選手(W-ANS ACADEMYへ)

 ◇ ◇ ◇

 スタートラインには未知の光景が広がっていた。「本当にワクワクした。これだけの大観衆を見るのは初めて。本当にビックリしたわ」。5万7528人の視線が注がれる中、ハリスは懸命に腕を振った。同組には憧れのパリ五輪金メダリスト、ジュリアン・アルフレッド(セントルシア)。1着で予選を突破した女王の背中はどんどん遠ざかっていったが、世界を肌で感じた18歳の表情は晴れやかだった。

 自己ベスト12秒04、世界ランキング2162位(大会時)。選考基準には達していない。しかし、各組織は全種目を通じて基準に達した選手が1人もいない場合、任意の選手を1人派遣することができる。このシステムを利用してベリーズが唯一の代表として送り出したのがハリスだった。たった1人での来日。「孤独も感じたけど、これは始まりにすぎない」。初の世界陸上は少女にとって大きな経験となった。

 今も拠点とするベリーズはユカタン半島の付け根に位置する小国で、面積は日本の四国より少し大きい2万2970平方キロメートル。人口は約40万5000人と宮崎市と同規模だ。「中米の美しい国で、小さいけれど間違いなく成長しているの。観光が盛んで、食べ物も本当に素晴らしい」とハリスはその魅力を説明する。

 尊敬するアルフレッドも、淡路島とほぼ同面積の島国セントルシア出身。2022年のオレゴン大会では同国から唯一の出場だった。当時はスポンサーもおらず、ウェアは上下真っ黒。しかし、2023年ブダペスト大会の前にはプーマからスポンサー契約の話が舞い込み、2024年のパリ五輪ではセントルシア初の金メダルも獲得した。「私も彼女と同じようなことがしたい」。6歳上の先輩に刺激を受ける。

 現在は大学でビジネス起業を学び、卒業後はビジネスオーナーとプロアスリートの二足の草鞋を目指す。もちろん2028年のロス五輪も目標だ。ロールモデルの背中を追いかけた12秒25。「ベリーズは世界に名が知られつつあるし、私も国を有名にしたいと思っている。これはその小さな一歩よ」。夢を追う18歳の目は希望に満ちていた。

(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
CW-X CW-X
lawsonticket
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集