世界陸上に「1/2202」の挑戦 母は日本人、19歳で島を背負い「グアムをみんなに見せるのが僕」
陸上の世界選手権東京大会は13日から国立競技場で熱戦が繰り広げられている。2007年の大阪大会以来18年ぶり3回目の日本開催。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「東京に集いし超人たち」を届けていく。第8回はグアムから唯一の出場となった男子1500メートルのヒュー・ケント。14日の予選で4分3秒84の組最下位に終わったが、母親の母国で堂々たる走りを披露した。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

東京世界陸上連載「東京に集いし超人たち」第8回
陸上の世界選手権東京大会は13日から国立競技場で熱戦が繰り広げられている。2007年の大阪大会以来18年ぶり3回目の日本開催。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「東京に集いし超人たち」を届けていく。第8回はグアムから唯一の出場となった男子1500メートルのヒュー・ケント。14日の予選で4分3秒84の組最下位に終わったが、母親の母国で堂々たる走りを披露した。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
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198の国と地域、計2202人のアスリートが名を連ねた出場リスト。グアムの欄には名前が1つしか載っていない。2006年生まれの19歳、ヒュー・ケントだ。一人きりの国際大会に「少し心細い気持ちもあります」と打ち明けつつ、「グアムがどういうものなのかをみんなに見せるのが僕。凄く光栄に思っています」と、マリンブルーと深紅のグアム旗を胸に走る誇りを口にした。
生まれも育ちもグアムだが、母親が日本人。取材対応も難なく日本語でこなした。長期休暇のたびに母の実家がある名古屋を訪れるが、東京で走るのは初めて。「日本の国立競技場で走ることは本当に楽しかったです。もう本当に凄いです。こんなスタジアムで……。大井の練習場でも日本人のボランティアの皆さんがみんなお辞儀して、気持ちよく迎えてくれました」と感慨深げだった。
現在は米本土オレゴン州のポートランド大で生物学を学ぶ。クロスカントリーのシーズンに向けて練習を積んでいた約4週間前、1500メートルで世界陸上に出場できることが決まった。切り替えて調整に励んだが、自己ベストの4分1秒37を更新する目標は叶わず。「一番後方になるのはもちろん知っていましたけど、結構がっかりですね」。初の世界陸上はほろ苦さが残った。
まだ10代だが、若さを言い訳にするつもりはない。「去年はまだ高校にもいて『自分はまだ若い』と、それほど速いわけじゃないことに納得していましたが、確かオーストラリアでは僕より年下の子がもう世界トップレベルで走っている。そういうものを間近で見ちゃうと、僕も本当に頑張りたい」。自分のためだけじゃなく、グアムのために。「速くなってグアムをかっこよく見せたい」と意気込む。
3年後のロス五輪でも代表入りを目指す19歳の野望は大きい。「800メートルからフルマラソンまで、グアム記録は全部僕が取りたいと思っています」。現在は5000メートルとショートトラックの1500メートルでグアム記録、1万メートルでもU20のグアム記録を持つ。島を1人で背負い、爽やかに駆け抜けた4分間。悔しさを持ち帰り、いつかグアム陸上界の歴史を変えてみせる。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)
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