「敵ではなく友達を作ろうよ」 世界新6m30を祈り、勝敗を超えた棒高跳びの友情、尊敬、矜持【東京世界陸上】
陸上の世界選手権東京大会は13日から国立競技場で熱戦が繰り広げられている。2007年の大阪大会以来18年ぶり3回目の日本開催。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「東京に集いし超人たち」を届けていく。第7回は「勝ち負けを超えたスポーツの美しさ」。15日の男子棒高跳び決勝でアルマント・デュプランティス(スウェーデン)が6メートル30の世界新記録をマークし、3連覇を達成。その瞬間、ライバルたちが自分のことのように喜び、駆け寄った。その1人が4位のサム・ヘンドリクス(米国)。その真意を熱く語った。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

東京世界陸上連載「東京に集いし超人たち」第7回
陸上の世界選手権東京大会は13日から国立競技場で熱戦が繰り広げられている。2007年の大阪大会以来18年ぶり3回目の日本開催。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「東京に集いし超人たち」を届けていく。第7回は「勝ち負けを超えたスポーツの美しさ」。15日の男子棒高跳び決勝でアルマント・デュプランティス(スウェーデン)が6メートル30の世界新記録をマークし、3連覇を達成。その瞬間、ライバルたちが自分のことのように喜び、駆け寄った。その1人が4位のサム・ヘンドリクス(米国)。その真意を熱く語った。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
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無邪気に飛び跳ねる姿は心からの喜びに満ちていた。デュプランティスが人類の最高到達点を塗り替えた瞬間、ライバルたちは自分のことのように歓喜を爆発させた。メダルを争った2位のエマノイル・カラリス(ギリシャ)、3位のカーティス・マーシャル(豪州)、4位のヘンドリクスが一斉に王者に抱きつく。「俺たちはみんな彼の大ファンだからね」。ヘンドリクスは当然のごとく頷いた。
メダルの色が確定した後、自分との戦いに挑むデュプランティスを3人が後押しした。「アイツなら100%決める」。ヘンドリクスはカラリスとともに短距離のスタートのような構えをして、祝福の“予行演習”を繰り返した。「当たり前のことと思ってほしくない。だってこんなに特別なことができる棒高跳び選手は二度と現れないかもしれないから」。そんな思いから観客を煽りもした。
33歳のヘンドリクスは17年ロンドン、19年ドーハ大会を制し、昨夏のパリ五輪でも銀メダルに輝いた世界屈指の選手。今大会は3位のマーシャルと同じ5メートル95を成功させたが、5メートル90で一度失敗したことが響き、表彰台には届かなかった。悔しさもあったに違いない。それでも、約10分間の囲み取材の大半を使って語りつくしたのは、自分ではなく3人のメダリストの素晴らしさだった。
「俺はモンド(デュプランティスの愛称)の一番のファンかもしれない」。歴代6位の自己ベスト(6メートル6)を持つ実力者だからこそ分かる世界記録保持者の凄さ。「仕組みは理解できる。でも、あれだけ特別なことを実現できるレベルに到達するなんて……謙虚な気持ちにさせられるよ」。助走を見れば、筋肉の細かな動きや考えていることまで透けて見える。それゆえに畏敬の念を禁じ得ない。
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