「陸上を辞めてしまうと思った」 中3で全国V、低迷…“消えた天才”中島ひとみを30歳で甦らせた「日本一」の資質【東京世界陸上】

藤川監督が「日本一」と評する資質 思い出す大学4年のエピソード
中島自身も“消えた天才”と言われた時期がある。しかし、昨年9月に12秒99を記録し注目を集めると、今季は日本歴代2位となる12秒71を記録。7月の日本選手権では準優勝を果たし、30歳で初めて日の丸を背負った。
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引退も考えたハードラーはなぜここまで這い上がってこられたのか。
「勝負魂は今まで見てきた選手の中でも本当に高い。めちゃくちゃ負けず嫌い。そこが日本一なんじゃないかな」
練習は納得するまで続ける。4年間、陸上競技に取り組む姿勢を見てきたからこそ、知る強さがある。
大学4年時の日本インカレ。中島は100メートル、200メートル、100メートル障害、4×100メートルリレー、4×400メートルリレーにエントリーした。5種目は異例中の異例。2日目を終えた時点ですでに疲労困憊だった。藤川監督は宿舎でその後に行われる200メートルの欠場を提案。ただ、なかなか首を縦に振らない。「負けたくない」と。
最終的には欠場するも、負けん気は筋金入り。決めたことは貫き通す。可愛らしい笑顔の奥にある強さが、再びトップまで呼び戻した。
初出場ながら予選を突破し、セミファイナルへ。世界でたった24人しか辿り着けない特別な舞台。諦めなかった先に見えた世界とは――。準決勝のレース後、中島は言った。
「一生忘れられない景色。続けてきて良かったなあって思いました」
目にうっすらと浮かべた涙も笑顔も、重ねた苦悩の分だけ輝いていた。
(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)
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