リーグワン覇権から3季遠ざかる名門 新HCは異色の経歴「ラグビーに魔法はない」託された復権への道――埼玉WK・金沢篤HC

粟屋GMが明かす監督人事の舞台裏「最終的にはロビーさんの判断で…」
「外から(HCを)連れて来るという考えは、我々の中にはあまりなかった」
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指導者選考について、そう振り返るのはGMを務める粟屋悟だ。ディーンズ前監督とチームは、2014年の就任以前から繋がりを持ち続けてきた。チームのアドバイザーとしてニュージーランドから選手、コーチへの助言を送り、定期的に来日して直接指導も担ってきた。そんな関係でも強化には大きな追い風になったが、敢えて現場での直接指導を求めたのは、チームの短期的な強化と同時に、ディーンズ氏による直接指導で日本人の人材を育てたいという中長期戦略があった。そのシナリオは、埼玉WKが毎シーズン優勝候補筆頭に挙げられる現在も変わることなく続いている。
「もしロビーさんがまだやりたいと言ったら、また来季もという話になっていたかもしれません。でも、本人も年齢的には自分もそろそろ(退任を)考えないといけないとはずっと話していました。1年とか2年とかいう話じゃなく、4年前、5年前という時間帯でです」
粟屋GMはそう明かしたが、そんな中で勇退を決めた指揮官も首脳陣も、コーチを担ってきた人材の中から後任を選ぶというのは当然のことだという共通認識があった。
「金沢がウチに入って来た時から次期HCと考えていたわけじゃない。他にもウチのOBで長くコーチをしてきた人材もいましたから。でも最終的には、ロビーさんの判断で、今のタイミングであればと後任に選んだんです。今、外国の優秀な、名のあるコーチが大勢日本に来ているけれど、ただやはり日本でラグビーをやっていく上で、日本人の指導者もしっかりと作っていかないといけないというのは、チームとしても、ロビーさんも考えて来たし、プロ選手も数多く出ているので、そういう土壌もありますから」
ワイルドナイツが意図した日本人指導者の育成、それはチーム内のOBも然りだが、そのような“垣根”に拘らない人材を育てるという視野が相まって、今回の金沢HC体制が実現した。今回のコラム掲載前に紹介した東芝ブレイブルーパス東京のピッチ内外での取り組みもそうだが、このようなチャレンジが上位チームだから出来たのか、取り組みの先に成績が付いてきたのかは、各々のチームが考えればいいが、国内トップレベルのラグビーが、目先の勝ち負け、損得だけでは中長期に渡る“勝者のシナリオ”は描き切れない時代を迎えているのは間違いないだろう。
昇格後もチームのスタイルに大きな変化はないと語った新HCだが、勿論自身がやるべき仕事には変化が起きている。
「これまでも短期的なところ、つまり勝つこと、1シーズンでしっかりと結果を残すことが役割でした。でもHCだと長期までいかなくても、中期的な目線というのが必要になってきます。そして一番の変化は、セレクションです。もう数週間で練習試合が始まるので、そこそこ前からそこのところは、まだ予想の範疇ですがロビーさんとも話しています。そこにかなり時間を費やすことになると感じています。アシスタント時代もメンバーは考えて、それを監督に投げてはいましたが、今度は決定権が自分にあるので全然違いますね。常に考えていかなければいけないという頭になっています」
では、どの対戦相手も実力を評価しながら過去3シーズン準優勝、準優勝、ベスト4と覇権から遠ざかるチームに、足りないものはどう考えているのか。
「いろいろな分析をしているのですが、先ずリーグワン自体がかなり競争力が高くなってきているので、どのチームも同じですけれど、ちょっとのミスとかで勝敗が変わるようになってきています。例えば12節でBL東京に負けましたが、あの試合ではラインアウト成功率が56%だった。もともとすごく高い数値じゃないけれど通常なら80%はあるのにです。なので、プレーの質と一貫性というのがすごく必要になってくるのは明らかですし、自分が今一番感じているのは、数は少ないですけれど必ずあるチャンスを掴めるかどうかです。ここはすごく重要で、そういうマインドセットにチーム、選手を持って行かないといけない。安全にとか、パッシブ(消極的)に受け身でやろうとするとそれを逃してしまう。個人的な考えですけれど、この数シーズンは、そのことが、やはり自分たちがタイトルを逃してしまってきた一つの要因なのかなと思います」
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