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ラグビー国内3連覇監督から社長へ 東芝上層部も後押し「30億規模のクラブに…」見据える進化とビジョン――BL東京・薫田真広新社長

日本ラグビーのこれから リーグワンクラブも「フェーズ3で30億規模を」

 その一方で、薫田新社長は、日本国内でのラグビー普及、活性化にも言及している。開幕戦同様に、常にリーグワン関係者、メディア、ファンの中で議論を呼ぶのが、プレーオフの開催フォーマットだ。チームが開催元となるレギュラーシーズンとは異なり、プレーオフでは主管がリーグ側に代わる。会場もリーグ側指定のスタジアムのため、順位による優位性などはほとんどみられない。これに関しては、複数のチームで順位が上のチームにアドバンテージがある会場で開催するべき、または準決勝まではリーグ戦同様に上位チームのホストスタジアムで開催するべきという意見は常にあるのだが、薫田新社長の見解はすこし異なる。

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「リーグワン代表者会議でも、プレーオフの主管を各チームによこせという意見があるのは事実です。でも、それをやると最後の最後まで順位が決まらないと、多くのチームが占有スタジアムを持っていないために試合会場をどう確保していくかというリスクがある。だから、リーグとしてはラグビーの聖地といわれる秩父宮と花園を中心にした会場選定をしてきたわけですが、もう一度そのエリアのラグビー熱を上げていくことも重要だと思います。特に花園に関しては相当に熱が低下していると感じています。なので、日本ラグビー全体のことを考えると、東大阪という地域をもう一度聖地化してくれというのは言い続けています。だから我々が準決勝で花園でも仕方ない。理想としては遠い花園よりも近い秩父宮でやりたいですよ。でも、全体のことを考えると、それとは別のはなしになる」

 それぞれの地域でのラグビーの活性化も視野に入れる薫田新社長だが、現行のリーグ参入チームも踏まえて、リーグ開催地、リーグ戦フォーマットの見直しや、ラグビーの普及についても語っている。

「実際にリーグワンは結局Jリーグなどの参入要件に倣って作っています。でも、いま東京なんてスタジアム確保は絶対無理です。そうしたら、ここでもう一度スタジアム要項の考え方を変えた方がいいんじゃないかとリーグ上層部にも話しています。これはあくまでも例えばですが、大相撲方式の東京、大阪、九州など主要地域での開催と、そこを中心にあと地方巡業のような位置づけでラグビーの人気をもう一度作っていくとか。そういうことをしていかないと、全国を網羅した普及やリーグ自体の認知度アップは難しいでしょうね」

 来季ディビジョン1の12チームを見ても「東京」と名乗るチームが4、いわゆる首都圏を拠点、ホストエリアとするチームが8と、都市圏集中の傾向が続く。管理団体が協会だったトップリーグまでなら、普及を意図した地方開催も配慮されていた。だが、主管がリーグに代わったことで、チームのホストエリア以外の地方都市では試合が見られないという深刻な状況は当面改善が難しい。まだ就任1年目も始まったばかりだが、自分たちの足元の地盤を固めることを優先するべき時点で敢えてこのような日本ラグビー全般への思いを語るのは、薫田社長が日本代表主将も務め、現役引退後も代表アシスタントコーチ、強化委員長などを歴任してきた背景があるからこそだろう。その思いは、リーグと同時に日本ラグビーの「これから」にも向けられている。

「リーグワンは、これからフェーズ2という段階に入ります。これは4年を1単位(フェーズ)として段階的にリーグを進化、成長させていく戦略ですが、フェーズ3の先に日本でのワールドカップ再開催というラグビー界の大きな目標がある。個人的には、どうやら開催は、よく言われている2035年からもう一つ(後に)ズレそうに感じていますが、いずれにせよ2027年のワールドカップの後には、リーグワン各クラブが極端なはなし30億円くらいの事業規模になっていないと次の開催は持って来られないのではないかと思います。それくらいの事業力が必要でしょう。そうしないとワールドカップでベスト4とか言っている話じゃないですから。フェーズ3で30億規模を目指す、そのためにはオーナーフィー(母体企業からの支援)を減らし、稼ぐ力をつけていかなければならないと思う。30億をフィフティー・フィフティーくらい、企業支援が15億円なら、おそらくこれまでより減額になるはずです。そういうチャレンジをしていかないと、たぶん開催は相当難しいし、そんな使命感をラグビーに携わるクラブは考えていくべきです。このような数値も、社長としてチャレンジしていく部分になりますね。実現するのは大変でしょうが、それは後々のクラブの形を作り上げていくことなんでね」

 80年近くに渡り「東芝」という看板を掲げて戦ってきたこのチームは、社会人ラグビー時代には数多の覇権を手にし、代表チームに多くの選手を供給してきた、いわば日本ラグビーの“盟主”的な存在だった。プロ化へ進んでいこうという時代を迎え、チームの運営形態に大きな変容が求められる中でも、運営面では先陣を切って事業化に踏み込み、ピッチ上では新リーグ初の連覇を果たした。“勝負師”と言われた新たなリーダーがトップに立つ中で、このチームは新時代も再び日本ラグビーの盟主への道を歩み始めている。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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