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ラグビー国内3連覇監督から社長へ 東芝上層部も後押し「30億規模のクラブに…」見据える進化とビジョン――BL東京・薫田真広新社長

“選手上がり”でGMから昇格、東芝上層部も後押ししたという【写真:東芝ブレイブルーパス東京提供】
“選手上がり”でGMから昇格、東芝上層部も後押ししたという【写真:東芝ブレイブルーパス東京提供】

「現場の人間がやるべき」“選手上がり”でGMから昇格…東芝上層部も後押し

 2021年に「東芝ブレイブルーパス東京株式会社」を立ち上げ、東芝グループ傘下の一企業となった。母体の東芝が大きな資金源なのは変わらないが、予算の名目も福利厚生費から広告費に変わった。その中で、東芝グループで長らく営業マンとして活躍し、設立当時から今年7月末まで社長を務めてきた荒岡義和は、後任について「現場の人間がやるべき」と薫田GMの昇格を後押し。東芝上層部からも、長らくチーム強化・運営に携わって来た同GMがトップに立つべきだという声もあったという。東芝が社員4000人の早期退職を募る中(最終的には3500人)でのトップ就任だった。

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 プロ化を進める競技団体の中には、いわゆる“選手上がり”ではないビジネスやマネジメントに長けた人材をアウトソーシングするケースは少なくない。薫田新社長も、ラグビー部部長時代の予算も含めた運営経験、チームを一時離れて社業に専念した経験はあるが、経営面の最高責任者というポストは新たな挑戦になる。事業化を進める形態へとチームが変容する中で、経営面でもトップに立ったことについてはどのように考えているのだろうか。

「スポーツチームの運営・経営というのは、普通のビジネスとは違うエンターテインメント系の要素がある。ラグビーの場合、独特の価値観、文化、これまでの背景などを考えると、僕は現場の人間がやれるのが一番いい、理想的な形かも知れないと考えています」

 企業スポーツから将来的なプロ化へ向けた大きな変革の黎明期と考えれば、レジュームチェンジを遂げるには従来の価値観に囚われず、ビジネスを主眼とした経営センスやノウハウ、従来のラグビー界にはなかったアイデアの持ち主が舵を握るべきだという意見は間違ってはいない。リーグワンも発足前夜という段階で“外部”の人材へ積極的に門戸を開き、現在でもその扉は開かれている。だが、取材する側として実際にそのような一部のスタッフと接して、メリットばかりではないとも感じてきた。

 例えば、リーグワン発足前に議論された、チームの参入や昇降格についてだ。準備委員会という組織を設けて審議するという説明を受けたが、協会を中心としたラグビー界以外から加わった委員からは、審査項目に「おもしろさ」も入れると聞いた。しかし、面白さほど個人の評価や好き嫌いが大きく、客観性の乏しい評価基準を、チームにとって場合によっては存続に影響しかねない昇降格を賭けた挑戦の中で審査ポイントとされるのはたまったものではない。

 本来、スポーツ自体が持つ不可欠な原則は「勝ったか負けたか」だ。そこに「おもしろさ」という恣意性の高い要素が入り込むことの危険性をあまりに軽視した考え方に違和感を覚えていた。他にも多競技での改革を、さも自分個人の手柄のように語る人物など胡散臭さを滲ませる人物も少なからずいた。

 見方を変えれば、当時の新リーグ(リーグワン)準備室や日本ラグビー協会が、最適な“外部者”を集められなかっただけだともいえるが、薫田社長は「全く違う業界、競技から来ても、ラグビー独特のものがある。これは中々変えられない。そういう部分でラグビー村の人間がやることも一つの正論なのかと思う」と指摘する。ラグビーが日本でプレーされて120年余り、社会人によるトーナメントも50年を超える歴史を積み上げてきた。その中で培われた文化や価値観、風土を踏まえた上で、何を継承して何を変革するかという観点で考えれば、同社長の唱える主張も間違いではないのかも知れない。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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