ラグビー国内3連覇監督から社長へ 東芝上層部も後押し「30億規模のクラブに…」見据える進化とビジョン――BL東京・薫田真広新社長
昨季、ラグビー・リーグワンで連覇を果たした東芝ブレイブルーパス東京の薫田真広新社長に話を聞いた。前身の東芝府中での現役時代から国内トップ選手として活躍。監督、部長、GM等を歴任して、8月1日からGM兼務で事業会社のトップに立った。監督としては2004年シーズンから3連覇を果たすなどチームを国内最強に導いた指導者が、経営面でもどう“最強チーム”を更に進化させるのか。経営トップとしての新たなチャレンジ、そして社長として見つめるリーグ、日本ラグビーについて聞いた。(取材・文=吉田 宏)

リーグワン・東芝ブレイブルーパス東京 薫田真広新社長インタビュー
昨季、ラグビー・リーグワンで連覇を果たした東芝ブレイブルーパス東京の薫田真広新社長に話を聞いた。前身の東芝府中での現役時代から国内トップ選手として活躍。監督、部長、GM等を歴任して、8月1日からGM兼務で事業会社のトップに立った。監督としては2004年シーズンから3連覇を果たすなどチームを国内最強に導いた指導者が、経営面でもどう“最強チーム”を更に進化させるのか。経営トップとしての新たなチャレンジ、そして社長として見つめるリーグ、日本ラグビーについて聞いた。(取材・文=吉田 宏)
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「まだ挨拶まわりばかりしてますよ」
多忙な真夏日の午後、汗を拭いながら苦笑した新社長の顔には、まだ“勝負師”の面影が残る。インタビューが行われたのは、8月1日の取締役会で正式に社長就任が決まってから1週間あまり。スタッフによるスタートミーティングも行われていない段階だったが、すでに社長としての鼻息は荒い。
「今までの福利厚生という日本のラグビーが置かれてきた環境から、リーグワンではウチや静岡ブルーレヴズのように法人化へ移行するクラブがある一方で、多くのチームが、なかなかそれを実現出来ない現実がある。ただ、本当にこれからの日本ラグビーの最適化を考えた時に、やはり法人化は必至になるでしょう。そういう状況の中で会社のトップになるという事は、やはり背筋の伸びる気持ちです。次のウエーブが起きる先駆的な位置に立たされているという意味での重責はありますね」
新社長の語った福利厚生が、“社会人ラグビー”と呼ばれてきた従来の形態を象徴する言葉だ。プロ化していない他の競技同様に、いわゆる「企業スポーツ」として長らく運営されてきたラグビーだが、チームの活動資金の多くは、一部広告費扱いもあるものの親会社が社員の福利厚生費として計上したもの、つまり社員の余暇活動の支援金として賄われてきた。その一方で、企業に依存しない、持続可能なチーム運営を目指してラグビー協会が舵を切ったのが2020年発足のリーグワンだった。将来的なプロ化を踏まえて事業化を進めていくというスタンスは、Jリーグ発足時のようなプロへの大鉈を振るった改革とは異なるが、創部から100年を迎えようとする社会人チームもある中で培われてきた日本ラグビーの文化、価値観を、段階的に新たな理想に近づけていこうというロードマップを描く。
その中で、リーグワン4シーズンを終えて母体企業とは別会社を設立しているのが、ディビジョン1(D1)のBL東京と静岡BR、D2の清水建設江東ブルーシャークス、日本製鉄釜石シーウェイブスの4チーム(社)。埼玉パナソニックワイルドナイツ、浦安D-Rocks(共にD1)が、母体企業の関連会社傘下での活動という形態をとる。つまりリーグが事業化を謳う中でも、参入チームの大半が会社すら立ち上げられていないのが現実でもある。
BL東京が東芝府中ラグビー部として発足したのは1948年。社会人チームの中でも強力に親会社の支援、理解を得てチーム運営、強化を進めてきた。東大ラグビー部出身で副社長を務めた町井徹郎、社長・会長を歴任した岡村正が日本ラグビー協会会長を務めるなど、上層部に楕円球との深い繋がりを持つ人材が多かったこともチームを後押しした。薫田社長も、そのような企業スポーツという環境の中でトップ選手、そして指導者として活躍、成功を収めてきた。だが、事業化を掲げたリーグワンという新たな時代に踏み込んだことで、80年近い伝統を築いてきたクラブも令和時代のスポーツチーム、企業スポーツのあるべき姿へと変容する必要性を“現場感覚”で察知して、事業化へと大きく舵を切った。
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