根強い「休養論」 傷だらけの錦織、「休まない」ではなく「休めない」理由
通算600試合出場、プロで12年間活動、満30歳のいずれかクリアでノルマが減少
前年度のトップ30に入った選手は、ATPツアー・マスターズ1000の9大会にエントリーが不可欠。そして、500シリーズの4大会のうち、1つは8月の全米オープン終了後のトーナメントを選ばなければいけない。大会によっては試合出場、メディア対応、トーナメントのプロモーションなどの義務を怠った場合、年間賞金の一部を罰金として支払うなど、厳格なルールも存在するという。
コミットメント・プレーヤーである錦織は大会参加義務をこなすため、トーナメントを連戦する必要がある。実際、今季これまで全てのマスターズ1000の大会に参加。3月のBNPパリバ・オープン、マイアミ・オープン、5月のマドリード・オープン、BNLイタリア国際の4大会に参戦。マイアミ・オープンとマドリード・オープンは故障で棄権を余儀なくされ、あと5大会が残されている。
500シリーズの大会では、2月のリオデジャネイロ・オープン、6月のゲリー・ウェバー・オープンに参加しており、まだ2大会に参加しなければいけない。ゲリー・ウェバー・オープンは2回戦で途中棄権。大会参加義務が錦織のコンディションに好影響を与えているように見えないが、同じコミットメント・プレーヤーでありながら、対照的な戦略を取っているのがフェデラーである。4月2日にマイアミ・オープン優勝後、膝の負担を軽減するためにクレーコートでの試合の回避する戦略を発表。6月12日のメルセデスカップで公式戦に復帰するまでコンディショニングに充てている。
なぜ、フェデラーはツアー中に十分な休養を取ることができるのだろうか。
「実はATPのルールでマイルストーンを達成したベテラン選手に設けられた特別なルールがあるのです」と綿貫は説明する。
<1>キャリア600試合出場
<2>プロ選手として12年間活動
<3>30歳を迎えていること
このいずれか1つを満たしている選手はマスターズ1000の4大会出場のノルマが1大会減少、3つの条件を満たした選手は大会参加義務を免責されるという。