根強い「休養論」 傷だらけの錦織、「休まない」ではなく「休めない」理由
フェデラーやナダルに対し、マイルストーン条項を満たさない錦織は「休めない」
フェデラーは35歳で、1999年からグランドスラムに出場し、通算1104勝247敗と全条件を満たしている。今季、全仏オープン10度目の優勝を果たしたナダルも31歳。2001年にプロ転向。ツアー通算849勝180敗で、3条件をクリア。マイルスストーンを達成している2人は昨季終盤戦を欠場してリハビリに専念し、今季も万全の日程調整で全盛期を彷彿させるパフォーマンスに結び付けた。
だが、条件をクリアしていれば、休んでしまえばいいのかというと、一概にそうとは言い切れない。2人が日程調整できるのは、抜きん出た実力が備わっていることが背景にあると、綿貫は解説する。
「他の選手なら大会を回避してしまえば、その分、ポイントを稼ぐチャンスを失い、ランキング、賞金額も下がります。しかし、フェデラー選手は今季、出場する大会を絞り、すでに4回優勝。ナダル選手もクレーコートシーズンにタイトルを重ねました。出た試合で確実に優勝できる圧倒的な実力があるからこそ、コンディションを整えながら高いランキングを維持することができるのです」
フェデラーは今季、マスターズ1000でモンテカルロ・オープン、マドリード・オープン、 BNLイタリア国際の3大会で参加を回避したが、マイルストーン枠ゆえにATPが正式に認めている。
一方、錦織は現在27歳で、プロ転向は2007年。キャリア成績は326勝152敗で、通算600試合に届かず、マイルストーン条項を満たしていない。「休まない」ではなく「休めない」という現実的側面がある。
輝ける実績を積み重ねた芝の帝王・フェデラーは、前哨戦のゲリー・ウェバー・オープンで圧巻の優勝。対照的に錦織は途中棄権を強いられた。連戦が続くなか、満身創痍の日本のエースは苦境を吹き飛ばすような活躍をウィンブルドンで見せることができるのか。大一番での巻き返しに期待が集まる。
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ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer