チーム強化で大切にしている信念「とにかく明確であること」

　“世界最高峰のリーグ”を掲げて誕生したリーグワンだが、まだまだその実力、選手層、運営能力で世界有数のリーグに及ばない部分は数多あるが、少なくともBL東京がコーチグループの中で取り組んできたものは、世界最高峰の領域にキャッチアップしようとしている。ハイレベルのコーチングから、自分たちにも役立つものを吸収して、強化に反映させているのは間違いない。そのような強化の最前線を駆け続ける森田CCにとって、チームを強化していく上で大切にしているものを聞くと、数十秒の沈黙の後、こう語り出した。

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「抽象的ですが、とにかく明確であること。自分のプランニングもそうですし、考えていることを明確にしようというのは大事にしています。後は、これも抽象的ですが、明るく振る舞うことですね。僕、選手に要求するところはしっかり要求するので、表情とかは明るく接していかないとね。僕と話している中で、選手が構えちゃったり、変に緊張状態の中でやり取りするよりも、柔らかい雰囲気の中でのほうがしっかり伝わるとか大事ですから」

　この笑顔での選手との接し方が、チームをより組織として機能させることに役立っているようにみえる。ここでは、前編冒頭に触れたコンピュータを手にした姿が1つのキーポイントになっている。どのように選手を個別に指導、アドバイスしているのかを聞くと、森田CCはこう説明する。

「チームミーティング以外で、選手と個別に話し合うときは、座ってやることはほとんどありませんね。そのようなやり取りは（1週間に）20回、30回はやっています。それがたった2分程度だとしてもね。午前中の練習を見終えて、午後に選手はジムワークをやったりするので、グラウンドに直ぐ行って『今週こうしようと思っていて、どう思う』みたいなことを、1人2分とか、長い時は5分、なんなら40秒で終わる選手もいますけれどね。そこでは大体映像を使っていますね、練習や試合、いろいろな素材です」

　森田CCが思うこと、個々の選手に伝えたいこと、やってほしいことを、要点を絞り、シンプルで明確に伝えることが重要なために、映像を使って選手がイメージしやすく、尚且つより正確に伝えようとしているのだ。では、1週間の試合へ向けた準備を、最強チームのCCとして、そしてコーチとして具体的にどう進めてきたのだろうか。

「チーム全体としては月曜日の朝にミーティングをします。その前の週の試合からの学びを、映像も使いながら大体2、3項目、いい面が6、7割で残りが更により良く出来る部分でしょうか。アベレージで8分くらいです。うちの選手たちは真面目なんですが、それでも、全体でのミーティングで彼らを引き込むためには準備が必要なんです。そのためにビデオなども使っている。要は、僕らから選手に伝えたいストーリーとか、伝えたい内容に、選手がスッと入って来れることが大事なので、かなり作り込んだ画像も用意したりもします。一方で、先の個別のミーティングなら1対1で話すので選手を引き込むための工夫などせずに伝えることは出来ますよね」

　実際に、選手たちにミーティングで見せるための作り込んだ動画も一部見せてもらった。詳しい内容は控えるが、その動画は自分たちがどんなスタイルのラグビーを目指し、そのためにはどんな個々のプレーやスキルが必要なのかが編集されているものだった。その映像を見れば、選手たちが求められるプレーを明確に理解し、やるべきことがイメージ出来る。そんな映像やプレゼンテーションも、選手たちがより明確にスタイルを徹底することに役立てながら頂点に登り詰めたシーズンだった。