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リーグワン連覇後押し、異色ポスト「CC」の証言 低迷期を越え…東芝ブレイブルーパス東京はなぜ勝てたのか

取材に応じた東芝ブレイブルーパス東京・森田佳寿コーチングコーディネーター【写真:編集部】
取材に応じた東芝ブレイブルーパス東京・森田佳寿コーチングコーディネーター【写真:編集部】

リーグ戦1位突破、プレーオフを勝ち進んだ快進撃のなかに「学び」

 躍進のシーズンを、強化担当スタッフとして押し進め、見つめてきた森田には、優勝するための成長を感じ取った幾つかの試合があった。これを序盤戦から振り返ってもらうと、どのチームも強化を進め、前年王者としてあらゆるチームにマークされながら、何故このチームがリーグ戦1位突破、プレーオフを勝ち進めたのかという成長の足跡が浮かび上がる。森田はそれを「学び」という言葉を使って表現する。

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「どの試合も学びや得たものはありましたが、先ずラウンド2(第2節)の(三菱重工相模原)ダイナボアーズ戦です。前半で50点近く獲った試合(49-8)ですけれど、自分たちがボールをプレーすることについてはすごく機能していました。ダイナボアーズがしてほしくないことを僕たちが出来たために、相手に対してプレッシャーを掛けられた試合です。でも、試合途中から自分たちでボールを手離してしまい、逆に相手に勢いを与えてしまった(後半12-0)。これは、消極的にプレーしてしまうと、チーム、ゲームがどうなるかというマインドセット面での学びになりました。自分たちが相手にプレッシャーを掛けているポイントはどこかを正しく把握することが大事で、この試合では自分たちがボールをプレーすることでしたが、それが途中から上手くいかなくなって、ボールを持ち続けることを怖がってしまった。そういう学びを得たという点で、この試合はすごく良かったのです」

 連覇の中でBL東京が見せたスタイルは明快だ。ボールを持ち続け、動かし、スピードを生み出しながらスペースに運ぶ。言い方を変えれば、連続攻撃で綻びが見えた相手防御のギャップを崩す。ベースになるのはCTBから外側の、相手防御と深さ、横幅とスペースが広がるエリアで、どう崩していくか。そこに内外、そしてキックによる後方のエリアへと攻撃バリエーションを加えて攻撃の厚みを持たせる。チームが「接点無双(接点敵なし)」というスローガンを掲げる中で、その局所だけに依存することなく、接点で優位に立つことでアグレッシブにボールを動かし攻めるスタイルをシーズンファイナルまで貫き通した。

 改めて相模原DB戦を振り返ると、序盤の競り合いから積極的に、我慢強くボールを動かし続け、前半は20分以降に6トライを畳み掛けた。しかし、後半に入りミスや相手のプレッシャーでアタックが上手くいかなくなると、キックなどで容易にボールを手離す選択によりリズムを崩した。チームにとっては、最良のシナリオでゲームを進められた前半と、自分たちで自分たちのスタイルを崩して機能しなくなった後半という、2つの異なる展開を体感出来たことが収穫だった。開幕2戦目という段階でのこのような学びが、シーズンを戦っていくための大きな指針になった。

「この試合が終わってからのレビューで学んだことがありました。キーになるボールを動かすことによってミスをしてしまったが、そのスキルセットは、僕らがボールを動かすいろいろなシェイプ(攻撃の形)の中で重要な選手同士の関係性や、試合毎に大事になってくる選手各自のパートがある。そこの熟練度がまだ低かったということです。そこを良くしていかなければ、いくらボールを動かしたいといっても、結局動いていないことになる。そんなリレーションシップのスキル、マインドセットのところで学びがあったのがダイナボアーズ戦でした」

 36歳の若きCCが次に挙げたのが、第6節三重ホンダヒート戦だった。前節で静岡ブルーレヴズにシーズン初黒星を喫した危機感がある中でしっかりと勝ち切った(35-12)ゲームだったが、ここでも勝利とはまた別にチームが更に高いレベルへと進むために必要な学びがあった。

「ヒートは昨季すごくディフェンスが良く、選手がハードワークするチームでした。ディフェンスラインがすごく広がっていて、そこに対して僕らはスピードを持ってプレー出来なかった。何故かというと、集団として、パートとして相手の脅威になっていくところが十分なレベルに達していなかったからです。結果的に勝つことが出来ましたが、その中で重要なこと、足りないものを学んだ試合だった。スピードを生かしながら組織として相手の脅威になるというところは、結果的に決勝戦ではすごく良く生かされた部分でしたが、このヒート戦での学びもあったからだと思っています」

 森田CCの話を聞いていて実感するのは、対戦相手の実力や順位、そして勝ち負けに関係なく、そのゲームから自分たちが何を学び取るかに、試合の意味や価値があるという視点だ。これはプロ化が進むラグビーでは当然のことでもあるが、その積み重ねを選手、コーチとも連携しながら進めていったのがCCとしての仕事でもあった。上手くいかなかったのは何故か、逆に何故上手くいったのか――毎週試合を重ね、そんな検証を丁寧に積み上げながらチームは「最強」へと成長を続けていった。試合を重ねる毎に得た「学び」が、チームの成長していくための貴重な糧となり、厳しい上位争いも乗り越えた轍となって連覇という頂点まで繋がった。そして同CCの振り返りは、連覇を賭けた上位勢との前哨戦へと進んでいく。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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