「ああ、これが僕たちの今シーズンのラグビーだ」と認識した試合

「（埼玉）パナソニック（ワイルドナイツ）戦（第7節）は、ヒート戦で学んだことを、特に後半に生かせた試合でした。僕らがいかにいいプレー、やりたいプレーが出来るチームかを再認識出来たのです。そして、鹿児島で行われた（第10節、クボタ）スピアーズ（船橋・東京ベイ）戦も重要な試合でした。大きな体の相手が、僕たちを狭くプレーさせたい、遅くプレーさせたいと挑んできた。そういうチームに対して、どうやって戦っていくかを思い描きながら臨んで、それがある一定は機能するということを認識できました」

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　埼玉WK戦は、残り5分で追いつかれて28-28に終わった試合ではあったが、ハーフタイムで7-16とリードを奪われながら後半追い上げ、残り10分で逆転という戦いを演じた。その後同点を許した展開は、一見すると勝利を逃したようにも見える。だが、優勝候補筆頭のライバルを、終盤に相手を突き放す得意のパターンに持ち込ませなかった戦いぶりと底力は、BL東京側に収穫のあったドローと評価していいだろう。

　そしてS東京ベイ戦は、森田CCの言葉通り強烈な接点での圧力でBL東京の選手をブレークダウン周辺に集め、同時にプレーをスローダウンさせようとしてきた相手に対して、BL東京らしくボールを動かし応戦して31-27と競り勝てた。この2試合で、直接優勝を争うであろうライバルたちに十分渡り合える自信を掴みながら、チームはシーズンクライマックスへ向けてさらに上昇曲線を描きながら進んでいった。

「その後の秩父宮でのワイルドナイツ戦（第12節）は、本当に自分たちが相手に掛けたいプレッシャーがどうゲームに影響するかを充分に体感できた試合でした。アウエーでの神戸（コベルコ神戸スティーラーズ）戦（14節）は、73点くらい獲った試合でしたが、自分たちがどうプレーをしていくのか――ということを改めてグラウンドで表現出来て、『ああ、これが僕たちの今シーズンのラグビーだ』と認識したゲームでした」

　終了目前にドローに持ち込まれた埼玉WKとの再戦として注目された第12節は、BL東京がFW、BKバランスの取れたアタックで優位に立つなどして42-31で勝ち切った。点の獲り合いになったが、堅守でロースコアに持ち込み、カウンターから一気にスコアまで持ち込むのが強みの埼玉WKが、リーグワンで40点以上の失点を許したのは23年4月の静岡BR戦以来2度目という事実が、BL東京の攻撃力の成長、チーム力の厚みを印象付けた試合でもあった。

　その一方で、神戸Sにはほぼゲームをさせないほどの圧倒的な勝利（73-28）を飾りながら、続く静岡BR戦は26-56と完敗を喫している。昨季公式戦でBL東京が敗れたのは、リーグ戦での静岡BRとの2試合のみ。強力なスクラムと接点での激しいファイトで重圧を掛けられての敗戦だったが、上位争いを展開していた終盤での痛恨の黒星も、森田CCにとってはその後の闘いへの重要な糧だった。

「自分たちがやっているラグビーに対して確かな自信を得ることが出来たのは、この辺りのゲームでしたね。静岡BR戦は、自分たちが想定したよりもすこし前に出てきた相手のフィジカリティーに受けてしまった。これがこの試合の学びですけれど、相手にフィジカルに来られた時にコチラも応戦する中で、すこし自分たちの世界を狭めてしまった。自分たちで、自分たちのDNAであるスペースにボールをプレーしていくことを辞めてしまった。それが顕著に出たのがこの試合だった。この敗戦は、本当にすごくいい学びになりましたね。一番いい学びだったかなと思います」

　スクラム、接点と強烈なフィジカルで挑んできた静岡BRに真っ向勝負で応戦しようという意識が強まったことで、ボールを動かして、スペースへ仕掛ける自分たちのラグビースタイルを貫こうという姿勢がブレてしまった。そのため相手の土俵でもあるパワーゲームを演じてしまったのが敗因だったが、チームは、この黒星も学びに転じてシーズン最終コーナーへと加速していった。

「静岡BRは、S東京ベイなどとはまた違ったタイプと認識していましたが、局所戦などで僕たちがどうプレーし続けて戦わなければいけないかを学ばされた相手でした。ヒート戦での学びがあり、神戸戦、パナソニック戦と良いパフォーマンスが出来たが、これは一試合毎の積み上げなので、徐々に良くなっていく過程でしたね。これが良いんだと思って作り上げて来たものに、さらにいい学びを得ながら16節、17節、18節を経てファイナルに入って行けたのが大きかった」