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リーグワン連覇後押し、異色ポスト「CC」の証言 低迷期を越え…東芝ブレイブルーパス東京はなぜ勝てたのか

国内最高峰を争うラグビー・リーグワン2024-25シーズンを制した東芝ブレイブルーパス東京。リーグ発足4シーズン目で初の連覇を果たしたチームとなったが、躍進した昨季を森田佳寿(よしかず)コーチングコーディネーター(CC)に話を聞いた。前身の東芝府中時代から日本選手権優勝6度、2000年代にはトップリーグ3連覇を遂げるなど日本ラグビーの盟主的な存在にも登り詰めたが、母体企業の経営危機も響いて2018年シーズンには過去ワーストの11位という低迷期も味わった。再びトップステージへと復活を果たしたチームの快進撃をCCという異色のポストで押し進めた男の言葉から、“ルーパスラグビー”の強さの源泉が浮かび上がる。(前後編の前編、取材・文=吉田 宏)

ラグビー・リーグワン2024-25シーズンを制した東芝ブレイブルーパス東京【写真:アフロ】
ラグビー・リーグワン2024-25シーズンを制した東芝ブレイブルーパス東京【写真:アフロ】

リーグワン王者・東芝ブレイブルーパス東京 森田佳寿CCインタビュー前編

 国内最高峰を争うラグビー・リーグワン2024-25シーズンを制した東芝ブレイブルーパス東京。リーグ発足4シーズン目で初の連覇を果たしたチームとなったが、躍進した昨季を森田佳寿(よしかず)コーチングコーディネーター(CC)に話を聞いた。前身の東芝府中時代から日本選手権優勝6度、2000年代にはトップリーグ3連覇を遂げるなど日本ラグビーの盟主的な存在にも登り詰めたが、母体企業の経営危機も響いて2018年シーズンには過去ワーストの11位という低迷期も味わった。再びトップステージへと復活を果たしたチームの快進撃をCCという異色のポストで押し進めた男の言葉から、“ルーパスラグビー”の強さの源泉が浮かび上がる。(前後編の前編、取材・文=吉田 宏)

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 朝5時前の府中・東芝グラウンド。ここから森田の1日が始まる。

「いつも4時57分に着きます。守衛さんから鍵を受け取って(クラブハウスを)開けるので、家を出るのは4時半です。トレーニングするのも結構好きなので、スタッフ全員でのミーティングが始まる7時台までは、体を動かしたり準備したりですね」

 勿論、オンシーズンの日課だが、CCという役職を託されて3シーズンが過ぎた。小脇にラップトップコンピュータを抱えた姿が、いまやこのチームの中では定番だ。アタック面を受け持つアシスタントコーチも担いながらだが、今の肩書きの仕事を森田自身はこう説明する。

「これは薫田さん(真広・GM=当時、現BL東京社長)が名前を付けたんです。CCが具体的に何をするかというと、年間の強化スケジュールを、プレシーズンからシーズンへとどんなブロック(区切り)で持っていくか、どのあたりに合宿や練習試合を入れるかなどを考えていきます。どのタイミングでどういう練習を導入するのか、どんな時期にどんなラグビーのメニューに取り組むのか。1週間の単位だと、ユニット練習を何曜日に何分やるのか。それぞれの担当コーチと、どれくらいの内容で、どれくらいの時間をかけてセッションをしていくのか、練習メニューについてどのタイミングでチームにプレゼンテーションするか、そういったことを話し合い、コーディネートするのが役割だと考えています」

 1週間単位での具体的な仕事の詳細も聞いたが、全てを文字で書き起こすと、おそらく読む側も眩暈がするほどの膨大かつ細かなものになる。本人の説明をまとめると、現場でコーチも務めながら、チーム強化を統括的に管理・調整するマネジャーという表現が適当だろうか。2019年に就任したトッド・ブラックアダー・ヘッドコーチ(HC)の下で、顔ぶれを変えながらもシーズン毎に有望なコーチ陣を集めてきたBL東京だが、その個々のコーチングを、HCと連携しながら、より効果的にチームの中で機能させ、独自のラグビースタイルを構築していく。森田CCは、それを実現するためのコーチ間、コーチと選手間、選手間の繋ぎ役、調整役でもあり、実際のグラウンド上でのコーチも担う。

 優勝の喧騒から一拍置いた時期の心境を聞くと、精悍な顔立ちがすこし緩んだ。

「感情としては、まずホッとしています。シーズン中に敗戦もありましたが、この試合からはこれを学んだ、チームとしてこういう取り組みをしてきたと、本当に1試合1試合と言えるくらいに学びを得て成長していったのが昨シーズン(24-25年)のチームです。決勝戦の前には『いいシーズンを過ごしたな』と思いましたし、やって来た取り組みが結果に繋がったと思っています」

 リーグ戦終盤までは埼玉パナソニックワイルドナイツを追う展開だったが、残り2試合の17節で首位に浮上。リーグ戦1位に躍り出た勢いのまま、プレーオフでは準決勝でコベルコ神戸スティーラーズをトライを許さない快勝(31-3)で突破すると、決勝でクボタスピアーズ船橋・東京ベイを18-13で下して、昨季に続いてFLリーチマイケル主将が国立競技場の空へと舞った。

 シーズン通算成績はリーグ戦15勝1分け2敗、そしてプレーオフ優勝(2戦2勝)。リーグ戦での1試合平均得点41.2、平均トライ6.1はリーグ1位だったのに対して、失点26.7は3位、反則数10.1は4位と課題も残した。だが、ゲームプラン、つまり自分たちの意図した仕掛けからトライを奪い獲る“方程式”の高い遂行力で、リーグ戦&プレーオフの完全優勝を達成した。SOリッチー・モウンガの閃きに満ちたゲームメークと個人技、FLリーチマイケルの驚異的な防御のワークレートなど圧倒的な個々の才能も大きな要因だったが、それだけで昨季の優勝を評価するのはあまりに勿体ないほど組織力、チームで頂点を掴み獲った。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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