比嘉大吾が引退、ボクシングファンを魅了した激闘と“愛されキャラ” 会見で声震わせ伝えた感謝
ボクシングのWBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦が30日、神奈川・横浜BUNTAIで行われ、同級2位の比嘉大吾(志成)が同級王者アントニオ・バルガス(米国)と対戦。ジャッジ全員が113-113の引き分けとなった。3戦連続の世界戦だったが、またも王座返り咲きはならず。試合後の会見で引退を明言した。数々の名勝負を繰り広げ、ボクシングファンを魅了してきた「愛されキャラ」。涙を堪えながらキャリアを振り返った。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

WBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦で引き分け
ボクシングのWBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦が30日、神奈川・横浜BUNTAIで行われ、同級2位の比嘉大吾(志成)が同級王者アントニオ・バルガス(米国)と対戦。ジャッジ全員が113-113の引き分けとなった。3戦連続の世界戦だったが、またも王座返り咲きはならず。試合後の会見で引退を明言した。数々の名勝負を繰り広げ、ボクシングファンを魅了してきた「愛されキャラ」。涙を堪えながらキャリアを振り返った。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
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マイクを握った比嘉が目を潤ませた。引き分けに終わった試合後会見。地元・沖縄県民への思いを聞かれると、40秒近く言葉が出てこなかった。「嬉しいっすね。いろいろ……いろいろあったけど、ここまで応援してくれたのはデカいっすね。感謝しています」。ようやく絞り出した29歳の声は震えていた。
波瀾万丈のボクシング人生だった。デビューから15戦連続KOの日本タイ記録を22歳で樹立。だが2018年4月、世界フライ級王座3度目の防衛戦で体重超過を犯し、王座を剥奪された。世界戦では日本人初の失態。引退も考え、半年間リングから離れた。復帰を促したのは18歳から師事する野木丈司トレーナー。「絶対やりたくなる。一緒に練習しよう」。しつこいほどの誘いに、再びグラブをはめた。
「正直な話、もう一回やろうと思ったのはお金のため」
不純な動機。だが、失敗した自分を見捨てず、無償で奔走してくれる周囲の存在に気づいた。「喜ばせたい」。目の色を変え、なかなか身が入らなかった自分を奮い立たせた。陣営の奮闘もあり、昨年9月に6年5か月ぶりとなる世界戦のリングへ。WBO世界バンタム級王者・武居由樹(大橋)を相手にダウンを奪ったが、0-3の判定で敗れた。「やり切った」。今度は清々しくグラブを置こうとした。
高校時代からの親友であるWBA同級休養王者の堤聖也(角海老宝石)とは10月に食事に出かけ、「辞める」と伝えた。就職活動もしていたが、11月にその堤との対戦オファーが舞い込み、翻意。20年10月にも引き分けた相手との再戦は、9回に両者がダウンを奪う壮絶な打ち合いとなった。3者ともに114-114のドロー決着。2戦続けて見るものの心を震わせる激闘を演じたが、王座には届かなかった。
堤が目の負傷で休養王者に正式認定され、暫定王者だったバルガスが正規王者に昇格。比嘉に3戦連続となる世界挑戦の機会が訪れた。三度目の正直へ。「負けたらその場で引退会見」と退路を断った。決意を胸にリングに立つと、大歓声が出迎えた。鳴り響く指笛。「大吾! 大吾!」の大合唱。4回に左フックで王者からダウンを奪うと、隣の声が聞こえなくなるほど拍手喝采が会場を包んだ。
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