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「下に見られたもんだな」記者は舌打ち 格上ウェールズ撃破、若き日本を燃え滾らせた36歳闘将リーチマイケルの献身

この1勝が新生エディージャパンにどんな道程を歩ませるのか

「ウェールズのスクラムは、2番が結構僕の方にくる組み方できた。それに対して最初は僕がすこしイン組み(外側から内へ向けての組み方)していたんですけれど、それだと僕のお尻が割れてしまい(HOとの間が割れてしまい)ヘッドアップ(スクラムから頭を上げてしまう反則)を一本取られてしまった。そこを先ずワーナー(ディアンズ)が指摘してくれて、それなら僕が(HO原田)衛に寄るんじゃなくて、紙森と衛が僕の方に来てくれという修正をして、3人で真っ直ぐ組んだら日本代表らしい低いスクラムに修正出来て(押し合いに)勝てたと思います」

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 出身は宮崎だが、九州共立大学で4年間を北九州市で暮らした竹内にとっては感無量の“地元”勝利だった。スクラムとなると、専門用語やFWならではの感覚的な表現が多くなるのだが、FW第1列3人がどのように組むか、第2列からの情報も参考に修正を加えるなど、スクラムを組む毎に敵味方の様々な情報を交換、共有し、8人全員の組み方を修正しているのが判る。このようなスクラムの組み方を細かに修正することに日本人が長けているのは、前回のエディー体制、前任のジェイミー・ジョセフHC体制でも強みと考えられてきた。その日本ならではのスクラムが、昨季アシスタントコーチに就任したオールブラックスのレジェンドPRオーウェン・フランクスの指導も相まって、ようやく機能し始めている。

 ウェールズ戦でも、前半22分には、スクラムを上手く回されてからのサイドアタックでトライを奪われているが、4分後には相手反則を奪い、同30分のスクラムではかなり重圧を掛けている。後半立ち上がりからのスクラムで、さらに優位に立てたのもハーフタイムも含めてしっかりと修正、対応出来た日本のクレバーさが影響しているはずだ。試合当日の暑さの中で、80分間1列3人を変更しなかったことについて、エディーは会見で「相手を圧倒していたセットを替える訳はない」とシンプルに理由を語っていたが、ウェールズが逆転を目指して猛攻を見せた同36分、相手に反則を犯させたスクラムをみれば頷ける。竹内自身も「後半しっかりと自分たちがまとまったからこそ、相手のリザーブパック(控えの第1列)を倒せたと思います」と頷いていた。

 リーチを中心としたしぶといタックル、セットピースでの善戦、そして酷暑で運動量が落ちたウェールズが後半スコアレスに終わったのも必然だった。さらに竹内は、スクラム戦についてこんな発言をしている。

「試合中でウェールズ選手の足(動き)が落ちているなと感じていました。効いているなと。僕たちがグッと押すのではなく、ずっと低く組み続けることでボディーブローのように効いていたと思います。最初は思い切りよくガーっと組んでスクラムが上がってしまったが、そこで皆で話をして、ジリジリ(低く組んで)いこうと修正した結果がでたと思います」

 1つ1つのスクラムを組み合い勝った負けたを重視するのではなく、80分間どういうスクラムを組めば、ゲーム自体で優位に立てるのかをFW8人で考えながら試合を進め、実際にスクラム、それ以外のプレーでもウェールズFWの体力を消耗させながら後半勝負を決めたのが日本の戦略であり、この日のスクラムの勝利でもある。

 エディー自身は、ウェールズとの第1テストの勝利をこう振り返っている。

「若いチームなので、前半は緊張もありテリトリー(地域支配率)、ポセッション(ボール保持率)で負けていた。ボールを簡単に相手に渡してしまうシーンも多かったが、ハーフタイムに選手の目を見ると、後半何をするべきか、どう戦うべきかを確信しているような眼の輝きを感じていたのでいけると思いました。そして、リーチのキャプテンシーが若いチームをしっかりとリードしてタフな試合を繰り広げてくれた結果の勝利です」

 昨季は80分の試合の中で、自分たちのラグビー、戦術を信じ切れずに、プランを壊してプレーするシーンも多かった日本代表だが、2シーズン目の初テストでは、最後まで自分たち自身を信じ、積み上げてきたものを遂行する意思と能力も高めてきた。2013年のウェールズ戦勝利がV字回復となり、チームがさらに一体感を増して15年W杯に加速したのは歴史的な事実だ。25年の2度目の勝利は、この先の新生エディージャパンにどんな道程を歩ませるのか。先ずは、神戸での第2戦での更なる進化を待つ。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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