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「下に見られたもんだな」記者は舌打ち 格上ウェールズ撃破、若き日本を燃え滾らせた36歳闘将リーチマイケルの献身

選手のコメントもチームの取り組みと成長を感じさせる興味深いものに

 試合後の原田は、周囲を笑わせながら偉大な同僚をこう評価している。

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「いつも地面に座ってますけれど、やる時はリーチさん、やってくれる。そこに付いていくのは簡単といえば簡単ですけど、頼りになります」

 原田は、高齢でいつも座り込んでいると面白おかしく表現したが、どんな時も手を抜かず、チームのために走り、体を張り続けるリーチの姿を間近で見続けてきたからこそ、誰よりもリーチの消耗が激しいと知っている。そして、この36歳のプレーを目の当たりにした若き桜の戦士たちも、猛暑の北九州で、勇気と闘争心を80分間燃え滾らせ、同時にゲームプランを冷静に遂行した。デビュートライこそ逃したが、このゲームの中でベストトライとなる前半16分のサインプレーで、見事なライン参加からのラストパスを放ったWTB石田は淡々と初テストの80分間を振り返る。

「エディーさんに、ずっとラスト10分で試合を決めると言われていましたから。(前半で7-19とリードされても)ウェールズが後半足が止まるのは分かっていたので、あまり焦りはなかった。逆に(失点を)2トライに抑えられたのは、踏ん張れて良かったという感じでしたね」

 初体験のテストマッチに、前半は全く自分のプレーが出来なかったと明かした石田だったが、それでも勝つためのゲームプランは頭に叩き込まれていたことが窺い知れるコメントだ。相手を消耗させるためにも、そして終盤の逆転のためにスコア上で喰らいついていくためにも、選手に求められたのは相手を上回るワークレート。自分たちが攻守で常に動き続けることで、対峙する相手も動かざるを得ない。そこには、コーチ陣への絶対服従ではなく、選手たち自身にプラン自体の整合性を理解し、自分たちが積み上げてきたものへの確固たる自信、自負心があったからこそ、最後までやり続けることができた。

 勝利から2日後の7日にオンラインで取材に応じたFB中楠一期(リコーブラックラムズ東京)の防御についての見解も、チームの取り組みと成長を感じさせる興味深いものだった。

「ディフェンスの部分ではギャリー・ゴールド(元神戸S、アメリカ代表HC、日本代表にはアドバイザーとして参加)さんが入って来て、新しく取り組んできたシステムというか、本当にシンプルなことですけれど、それを続けるフィジカルであったりフィットネスといったところを、ずっと20日間準備してきた。なので、すごく自信を持って臨めたなと思います。ウェールズに対して一つ一つのファイトで負けていないというのは皆の頭の中に入っていたと思うし、しっかり準備した通りの強度でディフェンスをし続けたことで、最後に勝つチャンスが生まれたかなと思っています」

 勿論タックルやプランの遂行力以外にも勝因はある。天候も明らかに日本のアドバンテージになったが、同時にスクラム、ラインアウトというセットピースが勝利を後押しした。先ずデータを紹介しておこう。

【スクラム・ラインアウト成功数(率)】

        日本  ウェールズ
スクラム   7(100%)10(88%)
ラインアウト 15(87%)19(79%)

 数字だけで評価、判断出来ないのがセットピースだが、ラインアウトではLOワーナー・ディアンズ(BL東京)、FLジャック・コーネルセン(埼玉WK)が、タップやプレッシャーで何度も相手にクリーンキャッチさせなかったことが失点の危機を未然に防いでいた。アタック面でも後半30分の逆転トライは、敵陣ゴール前のラインアウトでジャンパー役のLOディアンズが敢えてジャンプぜず捕球する“奇襲攻撃”から一気に押し込んで奪ったものだった。

 スクラムについては、以前にも紹介した「シバ(芝)」をキーワードにした低さへの拘りと同時に、ウェールズ戦では日本らしい細やかさと修正力が機能していた。序盤戦では互いに反則を取られたり、組み合う毎に優位さが変わる展開だったが、終盤へ向けて日本がプレッシャーを掛けてきた。このエリアに関しては、常に雄弁なPR竹内の言葉を紹介しておこう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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