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「下に見られたもんだな」記者は舌打ち 格上ウェールズ撃破、若き日本を燃え滾らせた36歳闘将リーチマイケルの献身

ラグビー日本代表は、7月5日に福岡・ミクニワールドスタジアム北九州で行われた「リポビタンDチャレンジカップ」でウェールズ代表を24-19で下した。ティア1と呼ばれる世界トップクラスの実績を持つチームに勝つのは2019年10月のワールドカップ(W杯)日本大会スコットランド戦以来のこと。対戦時に相手が世界ランキング12位と低迷していたとはいえ、昨春復帰したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)の下で大幅な若返りにシフトした日本にとっては価値のある1勝。この勝利が昨季テストマッチ4勝7敗と苦戦が続いたチームのV字回復の起点になるのか。灼熱の小倉での80分間を検証する。(取材・文=吉田 宏)

ウェールズ戦で若き日本代表を牽引した36歳リーチマイケル【写真:JRFU】
ウェールズ戦で若き日本代表を牽引した36歳リーチマイケル【写真:JRFU】

ウェールズを24-19で撃破 灼熱の小倉80分間を検証

 ラグビー日本代表は、7月5日に福岡・ミクニワールドスタジアム北九州で行われた「リポビタンDチャレンジカップ」でウェールズ代表を24-19で下した。ティア1と呼ばれる世界トップクラスの実績を持つチームに勝つのは2019年10月のワールドカップ(W杯)日本大会スコットランド戦以来のこと。対戦時に相手が世界ランキング12位と低迷していたとはいえ、昨春復帰したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)の下で大幅な若返りにシフトした日本にとっては価値のある1勝。この勝利が昨季テストマッチ4勝7敗と苦戦が続いたチームのV字回復の起点になるのか。灼熱の小倉での80分間を検証する。(取材・文=吉田 宏)

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 世界ランク12位のビジターを、同13位のホスト国が倒した戦い。23年W杯以降低迷するウェールズからの、わずか5点差の勝利だったが、新生エディージャパンには“されど”の大きな1勝となった。

「ホントに、勝ちました。本当に皆さんの声援のおかげだと思います。北九州で、日本代表にとっては勝ち続けることが大事だと思います。本当に皆さんの声援が力になったので、この暑い中で、このチームでやっとティア1の国に勝って、本当に選手、チームを誇りに思います」

 いつもより高ぶり、すこしまとまりの無いFLリーチマイケル主将(東芝ブレイブルーパス東京)の試合直後の話しぶりに、この1勝の重みが滲む。最高気温33度を超える灼熱の闘いは、立ち上がりは敗色の色濃い中で始まった。

「下に見られたもんだな」

 記者席で、こんな思いで舌打ちをしたのは開始2分過ぎのことだった。日本陣22m内でPKを得たウェールズだったが、タッチキックの選択に迷いはなかった。ゲームプラン通りなのだろう。世界ランキングで12、13位と並び、自分たちは泥沼の17連敗。1点でも上回るのがセオリーでもあるテストマッチだが、日本相手ならトライは獲れる――。そんな自信が窺えた選択だったが、その結果はPGによる3点どころか、ラインアウト起点のサインプレーからいとも容易く先制トライを奪われた。

 こんなにあっけないほどの脆さでスコアを許すのは、昨季から大きく変わらない。頭の中に不安が過る。開始10分には、CTBディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)の好セーブで失点こそ回避したが、左オープンから容易にタッチ際を崩される。嫌な流れが見え始めた時に、流れを変えるプレーを見せたのが、まとまりの無いコメントをしたスキッパーだった。

 前半13分に自陣22mライン目前まで攻め込まれたが、背番号6を背負ったリーチが、ウェールズ代表106キャップのNo8タウルペ・ファレタウに腕と胴に両腕を絡ませるようなタックルで、ボールコントロールを封じ込んだ。2分後には今度は敵陣で、ファンブルボールにもたついた相手にBL東京の同僚HO原田衛とのダブルタックルをお見舞した。パスワークをベースとしたアタックに誇りを持ち、先制トライで主導権を掌握しようというウェールズを勢いづかせない好守を連発した。

 ウェールズ戦へ備えて6月16日から始まった宮崎合宿。低迷した昨季から変化を感じたのが、この防御だった。昨季までの日本代表のスタンダードより思い切って前に仕掛けるラッシュアップ防御を新たに導入。イングランド代表HC時代にエディーがチームに落とし込み、いまだに強みになっている素早い仕掛けを、復帰2季目の桜のジャージーにも取り入れた。

 勿論、昨季テストマッチ1試合平均39.5という失点(平均得点27)を改善したいのは明らかだが、この日の立ち上がりの“脆さ”からは不安を感じていただけに、闘将の体を張った激しいプレーが、相手のウェールズ以上に桜のジャージーの仲間たちに大きなインパクトを与えた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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