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死亡事故きっかけに…高校スポーツの熱中症対策、米国は法制化加速 “お金をつぎ込める学校”は新たな対策も

練習時間と試合機会を確保するためお金をつぎ込んでいる学校も

 これらの州法や協会の規則は、冷却ゾーンの設置や暑さ指数に沿って活動の軽減や中止を求めている。法や規則を守る上で役立っているのが、高校の運動部の試合でも、観客を集め、入場料を徴収してきた歴史だ。たいていの学校では、試合をするときには、観客に飲食を販売して収益を得ているので販売スペースを持っている。このスペースに業務用冷凍冷蔵庫や製氷機を設置していることが多い。だから、グラウンドのすぐ近くで大量の氷がすぐ用意できる。

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 また、タルボットさんからは、暑さ指数が活動できる基準まで下がるのを待って、試合開始時間を遅らせることもよくあると聞いた。アメリカの高校運動部の会場となる学校のグラウンドには、ナイター灯がついていることが多い。以前にここでもレポートしたが、夕方から試合を開始するほうがより多くの観客を集められることから、高校の運動部でも次第に夕方開始が主流となった。もともと暑さの厳しい日中に試合を行うという設定になっていないから、暑さ指数が下がるのを待っても、30分から1時間程度の遅延で収まることが多い。

 そして、新しい発想をするところも出てきた。基準を超えると活動ができないので、練習時間と試合機会を確保するためお金をつぎ込んでいる学校もある。テキサス州のいくつかの学校区では、アメリカンフットボール場の全てを覆う屋根をつけたり、アメリカンフットボールの練習ができる多目的な屋内施設を建設するところが出てきている。

 フロリダ州やニュージャージー州の法は、州の体育協会を通じて、熱中症予防を義務づけている。これによって、熱中症リスクの高い日はどの学校も活動はできないので、他校よりもたくさん練習すれば、より優位に立てるという考えを抑止することもできる。しかし、これからは暑くても練習できる環境を作れるチームが有利になるという格差も出てくるだろう。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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