デビュー前の2歳馬に「凄いやろ」→日本ダービー制覇 キズナ×佐々木師から学んだ「走る馬」の基準
脳裏に焼き付くキズナのキャンター
当時のコラムには調教初日と書いているが、実際には4日目の水曜日(8月22日)だったと思う。キズナを担当した田重田静男厩務員と一緒に坂路のモニターを食い入るように見る。力強くて弾むようなキャンター。2歳馬らしからぬパワーとバランスの良さだった。
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佐々木師「凄いやろ」
私「凄いですね」
この時の走りはいまだ脳裏に焼き付いているし、これが新馬の「走る、走らない」を決める基準のひとつにもなっている。それまでは追い切りを見ることで調子の良さ、能力の高さを知ることができると思っていたが、この日以来「普通キャンターも見ないといけない、だから調教師は追い切り以上に普段のキャンターを見ているんだ」と学んだ時でもあった。
2012年8月22日の答え合わせをする日がやってきた。レース当日は東京競馬場で仕事があったので、運よくレースも現地観戦できた。道中後方、最後の直線でもまだ後方。でも信じて、外へ持ち出した時に大歓声の中に紛れて「ユタカッー!(敬称略)」と大絶叫したら1着。うれしいというよりも、鳥肌が立って、自然と目が潤んできた。馬主でもなければ、生産者でもなければ、厩舎関係者でもない。だけど、目の前で起こった事象に感動することしかできなかった。これがダービーなんだ。
今年、デビューする前から「ダービー馬」と思っていたのはクロワデュノール。新馬戦のレース内容を見て、その想いが強く固まったところはあったし、ホープフルSを勝って「やっぱり」とも思った。しかし。皐月賞前からミュージアムマイルの成長曲線が素晴らしい。それが皐月賞の結果なのかなと思ったりするのだが、舞台は東京に替わる。
というわけで、まだ答えが出ていない今年のダービー。斉藤崇史調教師も高柳大輔調教師もこんなにたくさんG1を勝つ前から懇意にしていただいている大好きな先生。どちらにも「ダービートレーナー」になってほしいが、そういうわけにはいかないんだろうな。
(井内 利彰 / Toshiaki Iuchi)
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