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秩父宮ラグビー場の客席に“異変” あるリーグワンチームの試み、「南スタンド最前列を…」迎える特別な「3.30」

今回のイベントにかける想いを語った栗原由太【写真:吉田宏】
今回のイベントにかける想いを語った栗原由太【写真:吉田宏】

車椅子支援に加えて様々なバリアフリーにも挑戦

 ユニバーサルデーでは、車椅子エリアの拡大に伴いボランティアスタッフも充実させる。栗原をはじめノンメンバーの選手らに加えて、東京・世田谷区のチームグラウンドに隣接する駒澤大学のラグビー部員も加わり、観戦のサポートや試合の解説などにも取り組む。

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「試合会場では高校生に(開催)準備を手伝ってもらったことはありますが、大学生にボランティアのお手伝いをしてもらうのは初めてです。ブラックラムズが取り組んできた地元の通学・通勤をサポートする『見守り隊』に、昨年10月から学生たちがトータル150人くらい参加してくれています。実は駒澤大学側にも課題があって、隣接するキャンパスは本来学生自治がスタートだったのが、コロナで全部失われてしまった。大学側もどうしていけばいいか困っていたタイミングで、僕らとこういうことやりませんかと持ち掛けたのがスタートで、そこから交流が続いてきた一環が今回の話になっているんです」

 自分たちチーム単体で社会活動を展開するだけではなく、地域などの繋がりを築き、様々な協力者、理解者を巻き込みながら新たな可能性を開拓しているのが興味深い。BR東京はチームビジョンとして「Be a Movement.」を掲げる。この言葉には、関係者と連携してラグビーの価値を最大化し、多くの人たちに感動と勇気を与える理念が込められている。このビジョンに基づいたチームバリューとして「Family」「Energy」「Beyond」というキーワードがある。

 何やら英語ばかりが並ぶが、これらはチーム内の自分たち自身へ投げ掛ける言葉である一方で、チームの外側と向き合うための動機付けでもあり、支援活動にも重要な意味を持つ。Familyは結束を示し、Energyは目的実現への活動力、そしてBeyondは様々な困難を乗り越える意志だ。今回のユニバーサルデーにも、このようなチーム理念が反映されている。

 当日イベントでは、車椅子支援に加えて様々なバリアフリーにも挑戦する。栗原が指摘した通り、完成から80年近い秩父宮は構造的に難しいエリアもあるが、普段は関係者が使用するメインスタンドのエレベーターの開放や、補助犬との観戦支援など健常者と障害者の“垣根”を取り除いた環境を用意する。

 従来から続けてきた取り組みでも、聴覚障害者向けコミュニケーションツールとして昨季終盤に初めて導入された自社開発の「Pekoe(ペコ)」も活用する。これは会話や講演等の音声を即時に文字化するスマートフォン用アプリで、今季の駒沢陸上、秩父宮開催の全てのホストゲームで使われてきた。30日の会場でもスタジアムMCの実況をテキストで楽しめるほか、視覚障害者にはスタジアムラジオ「BlackRams Radio」のサービスも用意する。

 さらにスタジアムに隣接する「場外イベントエリア」でも様々な催しを用意する。パラリンピックの柔道で3連覇を果たした藤本聰さんをゲストに招き、弱視環境を体験出来るメガネをかけながらラグビーボールに触れる体験会を開催。スマートフォンで道案内、障害物検出、歩行レコーダー機能を備えた聴覚障害者向けアプリ「Eye Navi(アイナビ)」や、すでにサッカーの日本代表戦でも導入されている、振動と光によって音の特徴を体で体感出来るユーザインタフェース「Ontenna(オンテナ)」の体験コーナーなども準備する。

 これらの取り組みに白崎CVOは「視覚障害者で目が見えないからスタジアムに来ても面白くないと思われがちですが、障害者の方からはスポーツ観戦はしたいというアンケートがあるのです。場内の歓声とか熱量、あとはキッチンカーの匂いとか、そういうものを体感したい、参加したいという方は非常に多いんです。なので場内が盛り上がった時とかに振動して伝えるとか、そんなサービスを体験してもらいたいですね」という。支援が必要な人たちにとって得るものがあるのは勿論だが、チーム、選手が直接交流することによる学びは貴重な資産になるだろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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