浦和は美しく紳士的な勝者だったか 済州戦の乱闘騒ぎで思い起こすクラマー氏の言葉
礼を重んじる心が備わっていた“世界一の柔道家”
一方、同じ東京五輪で日本が痛恨の敗戦を喫した競技もある。同大会で初めて採用された柔道である。
日本は順当に軽量級、中量級、重量級で金メダルを獲得する。しかし最大の焦点は、実質“世界一の柔道家”を決する無差別級だった。そして日本の前に立ちはだかったのが、オランダのアントン・ヘーシンク。日本の切り札だった神永昭雄を、決勝の畳で押さえ込んだ。
金メダル獲得という快挙達成に、オランダのコーチ陣は畳に駆け上がろうとした。だがそれを見越したヘーシンクは、「待て」と手で制する。そして、そのままゆっくりと立ち上がると、礼をして静かに畳を降りた。日本の国技を学んだヘーシンクには、礼を重んじ相手を尊重する柔道の心もしっかりと備わっていた。その素晴らしい人間性に、敗戦という屈辱を味わい傷ついた多くの日本人の心が癒されたはずだ。
AFCチャンピオンズリーグのラウンド16で、済州ユナイテッドの選手たちが、醜悪な暴挙に出た。蛮行の度が過ぎたため、チョ・スンファン監督の「勝者にもマナーが必要だ」という発言は、轟轟たる非難にかき消さがちだ。しかし一方で、浦和は美しく紳士的な勝者だっただろうか。