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ラグビーW杯代表戦士が異色ビジネス挑戦 「おもしろレンタカーで…」通念にとらわれない奔放な発想

39歳の今もフィールドを走り続ける体づくりに余念がない【写真:吉田宏】
39歳の今もフィールドを走り続ける体づくりに余念がない【写真:吉田宏】

現役選手ながら準備を進める福岡での事業立ち上げ

 福岡での生活も3シーズン目を迎えようとしている中で、グローカルな視点も踏まえながら山田はピッチ外でも“ステップ”を切ろうとしている。

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「セカンドキャリアという言葉はあまり好きじゃない。現役の間というベーシックインカムがきちんとある中で、色々やりたいなと思っています。例えばそこで失敗しても、選手として頑張ればいい。こういうことも、昔はラグビーに専念しろとかいろいろ言われましたけどね。でも、今の山田章仁が23歳なら、もっといろいろなことがやらせてもらえたと思うんです。出来なかったことがいっぱいある。今の日本のラグビーは、世界と比べるとちょっと窮屈ですけれど、多くの人たちが見出せる価値は滅茶苦茶沢山あると思います」

 そんな環境の中で、山田が準備を進めるのが福岡での事業の立ち上げだ。

「福岡で『おもしろレンタカー』という会社のフランチャイズを考えています。この会社は、オープンカーのレンタカーをしている。普通の車でもいいけれど、オープンのマニュアル車を運転したいというニーズも、ニッチではあるけれど人気なんです。しかも海外からの旅行者もね」

 おもしろレンタカーは、千葉・野田市に拠点を置く株式会社はなぐるまが運営するレンタカー事業で、東日本を中心に成長を続けている。オープンカーに特化したレンタカー事業というユニークな業態ではあるが、そこに山田自身が魅力を感じている。

「日本人にはあまり分からないんですよ。でも、性能のいい日本のマニュアル車で日本ならではのビル街を駆け抜けたりすることに価値がある。些細な事かも知れないけれど、他の国にはない魅力が詰まっている。そういうものを発信していきたいというのは、グローカルなことにも繋がっていると思うんです。ラグビー以外のところでも、そういう側面からチャレンジしていきたいんです」

 西は近畿までしか事業展開していない「おもしろ―」社だが、インバウンド人気も含めて福岡での事業展開は十分に可能性があるというのが山田の構想だ。「準備は、車を揃えたら出来ますから」と本人は、直ぐにでも“キックオフ”を迎えたい鼻息だ。

 このタイミングでのインタビューでは、やはり日本ラグビーについての山田の思いを聞きたかった。まず大枠としての日本ラグビーの現状について聞くと、開口一番、かなり手厳しい指摘をしている。

「よくないですね。日本の選手が海外に出て行ってないこともありますが、日本代表が今はそう強くない。どうやればラグビーの人気が出るのかを考えると、やはり日本代表が強くなることです。15年W杯の時に強くなって、今風のプロっぽい方向へと舵を切っています。それはそれでいい。でも、実際には弱くなった。それなら、別に過去に戻してもいいんじゃないか。今、いいフェーズに向かっているかというと、僕は向かっていないと思う」

 第1次エディージャパン時代(2012-15年)に代表挑戦から2015年W杯出場を掴んだ山田だが、同世代の堀江翔太らと共にリスク覚悟で海外で経験を積み、チームはW杯での南アフリカ撃破やプール戦3勝という新たな歴史を築いてきた。そんな山田にとっては、昨秋のW杯のプール戦敗退や、若手起用に大きく舵を切ったとはいえ今季のテストマッチの苦闘ぶりと結果が伴わない現実には疑問を持つ。その疑問は、代表チーム自体の強化だけではなく、世界クラスの選手が大挙加入するリーグワンがどこまで代表強化に寄与したかという“効能”にも及んでいる。この秋の代表戦を観ての実感を聞くと、20秒ほどの沈黙の末にこう口を開いた。

「上手くいってないというよりは、普通なんじゃないかな。そもそもラグビーは自分たちよりも強いチームには勝てない。毎回南アフリカには勝てないですからね。メンバーについても、日本人の選手というのはどうでも良くて、日本の良さを持った選手が少ないですね。じゃあ何故少ないか。それはエディー(・ジョーンズ日本代表HC)のせいじゃなくて、フィールドにいないから選べない。じゃあ何故フィールドにいなくさせたのかということを考えて欲しいですね。今の時代、どこの出身でもいいんですよ。選手は。だた、日本の良さを持つ選手15人が集まったほうが日本としてまとまれる」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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