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「正直、慶應も大学も行きたくなくて」 進学校出身、批判に晒され…W杯経験した今も39歳現役に拘る理由

国内ラグビー最高峰の「NTTリーグワン2024-25」の開幕が近づいている。4シーズン目を迎える今季は、東芝ブレイブルーパス東京のリーグ初となる連覇か、埼玉パナソニックワイルドナイツの2季連続の準優勝からの捲土重来か――。覇権争いが注目される中で、ディビジョン2の九州電力キューデンヴォルテクス(九州KV)で39歳の挑戦を迎えるWTB山田章仁に話を聞いた。セオリーに捕らわれない奔放なプレーで日本代表、国内外クラブでのプレーと、多様なチャレンジを続けてきた。ラグビーでの活躍同様にユニークな人生設計も“山田流”の変幻自在さで切り開く。40歳を目前にしながら、なぜ現役にこだわるのか、敢えて故郷・九州を活躍の舞台に選んだのか。その言葉からは、20年以上に渡りトップアスリートとして走り続ける楕円のファンタジスタの生きざま、そしてラグビーへの思いが浮かび上がる。(取材・文=吉田 宏)

39歳の今も現役にこだわり走り続ける山田章仁【写真:九州電力キューデンヴォルテクス提供】
39歳の今も現役にこだわり走り続ける山田章仁【写真:九州電力キューデンヴォルテクス提供】

ラグビー・山田章仁インタビュー前編 2部の九州KVで現役を続ける現在地

 国内ラグビー最高峰の「NTTリーグワン2024-25」の開幕が近づいている。4シーズン目を迎える今季は、東芝ブレイブルーパス東京のリーグ初となる連覇か、埼玉パナソニックワイルドナイツの2季連続の準優勝からの捲土重来か――。覇権争いが注目される中で、ディビジョン2の九州電力キューデンヴォルテクス(九州KV)で39歳の挑戦を迎えるWTB山田章仁に話を聞いた。セオリーに捕らわれない奔放なプレーで日本代表、国内外クラブでのプレーと、多様なチャレンジを続けてきた。ラグビーでの活躍同様にユニークな人生設計も“山田流”の変幻自在さで切り開く。40歳を目前にしながら、なぜ現役にこだわるのか、敢えて故郷・九州を活躍の舞台に選んだのか。その言葉からは、20年以上に渡りトップアスリートとして走り続ける楕円のファンタジスタの生きざま、そしてラグビーへの思いが浮かび上がる。(取材・文=吉田 宏)

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「ちょうど、次の水曜日に東京行きますよ」

 山田章仁から、そんな連絡がきたのは11月半ばのことだった。

 6月から始まった日本代表の国内シリーズ。試合会場でのトークイベント参加者に、何度もその名前を確認したが、変幻自在のステップワークをみせるファンタジアスタから話を聞くには、すこしまとまった時間が欲しかった。企てていた中洲の夜を惜しみつつ再会した浅草で、いきなり「なぜ39歳でも現役を続けるのか」という質問をぶつけてみた。

「楽しい。それだけです。ラグビーを楽しむのはもちろんですが、ラグビーがある生活が楽しいかな」

 ディビジョン2とはいえ、シーズン毎にレベルを上げるリーグワンに挑み続ける理由に、迷わずこんな言葉が返ってきた。開幕への準備も加速する時期に東京に来た理由の1つもトレーニングだ。2019-22年にプレーしたNTTコム(現浦安D-Rocks)時代のトレーナーだった鎌田健史郎さんが2023年に雷門近くに開いたジム「Palette(パレット)」に定期的に通う。上京しない時も、毎週月曜日にはオンラインでのアドバイスを受ける。もちろん、ラグビープレーヤーとしてさらに自分を高めるためだ。これまでに築いてきた人間関係を大切にする姿勢、いや、もっと適切な表現なら底抜けの人懐こさ、そして人情や仁義だけではなく、自らを高めていくためにも自分が作った“繋がり”をフル活用するのも山田らしい。チャンスや運をただそのまま享受するだけではなく、そこからの可能性や広がりに思いを巡らし、新たな挑戦へ踏み込んでいくのがファンタジスタの流儀だ。

 福岡市に拠点を置く九州KVへ移籍して3シーズン目を迎える。北九州・小倉高出身の山田にとっては、故郷に最も近いチームでの新たな挑戦だ。

「ようやく楽しめるようになってきましたね。日本代表やパナソニックでは、勝たないといけないという思いが強かった。今が負けていいわけじゃない。結果は残さないといけないけれど、重圧の中でいかに戦うかというプレッシャーとは、すこし違う楽しさがあります」

 ラグビーを楽しめるようになったのは、単純にディビジョン1から一段下のチームに移籍したからだけではない。代表や様々なチームで長らく積み重ねてきた経験値と、自分のキャリアをどう生かし、伸ばしていくかという山田独自の価値観や考え方が「楽しめる」背景にある。

「ラグビーを長くやっているので、いろいろなものがしっかり見えてきたり、いまも経験をしなきゃもったいないとも思っています。経験を生かしてからの、いい経験じゃないですか。それと、よくありがちですけど、セカンドキャリアのためにファーストキャリアを生かすというのも、もったいないと僕は思うんです。だって、自分の経験を一番生かせるのはセカンドキャリアじゃなくてファーストキャリアですから。僕も経験を生かす世代になってきている。より新しい経験も得られています。それを、もっとここからの人生に生かしたいですね。もちろん、今までと同じくらい現役が続けられるといえば物理的に無理だと思います。でも、残り僅かで終わらせるという考えではなくやっています」

 選手生命が飛躍的に伸びていることも39歳の現役活動を支えているが、今回の浅草での個人トレーニングのように、若い頃から自己研鑽に取り組んで生きたことも山田流。若い時から続けてきた自己投資が、2015年ワールドカップ(W杯)サモア戦での“忍者トライ”と賞賛された体を反転させてのトライのようなトリッキーなプレーに繋がり、40歳を前にしたいまも配当を受け続けているようにもみえる。

「体力的には全然問題ないですよ。問題ないし、むしろ上がっていますね。今回のジムもですが、体のケアに時間を費やすということは、学生の時からラグビーを仕事にしていくと決めてからは、そういうマインドに近い考え方は持っていました」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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