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苦闘、批判…ラグビー世界8強奪還への萌芽の検証 司令塔が物足りぬ新生日本代表で評価すべき才能

「リポビタンDツアー2024」でヨーロッパ遠征中のラグビー日本代表は、第2戦でウルグアイを36-20で下してテストマッチの連敗を3で止めた。対戦時の世界ランキングが14位(現在13位)の日本に対して同19位の相手は、多くのメンバーが25歳以下。マストウインの相手に後半残り10分近くまで26-20と接戦を強いられるなど課題も露呈した中で、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が掲げる「超速ラグビー」の成果が見え始めている。苦闘の中で世代交代を進める新生日本代表が見せた、世界の8強奪還への萌芽を検証する。(取材・文=吉田 宏)

ウルグアイに勝利したラグビー日本代表【写真:JRFU提供】
ウルグアイに勝利したラグビー日本代表【写真:JRFU提供】

「リポビタンDツアー2024」第2戦でウルグアイに36-20で勝利

「リポビタンDツアー2024」でヨーロッパ遠征中のラグビー日本代表は、第2戦でウルグアイを36-20で下してテストマッチの連敗を3で止めた。対戦時の世界ランキングが14位(現在13位)の日本に対して同19位の相手は、多くのメンバーが25歳以下。マストウインの相手に後半残り10分近くまで26-20と接戦を強いられるなど課題も露呈した中で、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が掲げる「超速ラグビー」の成果が見え始めている。苦闘の中で世代交代を進める新生日本代表が見せた、世界の8強奪還への萌芽を検証する。(取材・文=吉田 宏)

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 56日ぶりの勝利を告げるホイッスルに、フィフティーンの顔には歓喜より安堵が浮かんだ。8月のフィジー戦から1試合平均52.3失点での3連敗。チームが取り組む「超速」を十分に発揮出来ないゲームが続いた中で掴んだ白星に、エディーは久しぶりの勝者として臨んだ会見で選手たちを称えた。

「今日の結果は良かったと思います。序盤にキャプテンをイエローカードで失い、残り15分でワーナー(ディアンズ、LO/東芝ブレイブルーパス東京)を退場処分で失った。とても難しい試合だったが、チームはファイトする姿勢を最後まで見せ続けてくれた」

 前半39分に、相手のハイパントを競り合ったSH齋藤直人(スタッド・トゥールーザン)が危険なチャージによるシンビンで10分間の一時退場。後半26分には、LOワーナーが頭部へのハイタックルで一発退場となり、都合24分間を14人での戦いを強いられながら、終盤に相手を突き放しての勝利。この日のトライで今季出場した9試合で7トライと、苦闘の中で奮闘するCTBディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)は「ラグビーにはパーフェクトな試合はない。そんな中で、今日のチームはグリット(気概、勇気)、忍耐力をしっかりと見せることが出来たと思う」と勝ちきれた理由を挙げている。

 その一方で、4戦ぶりの勝利にも厳しい声は少なくはない。チーム始動からテストマッチ10試合を戦いながら、掲げる「超速」の熟成度が十分には上がってこない。経験値のある選手の一部は選ばず、あまりにも若手抜擢が多い中での思わしくない結果に、周辺からの批判的な声があるのも事実だ。

 だが、世論が苦闘続きのネガティブな“雰囲気”に包まれる中で、苦戦を強いられながらチームは着実な1歩を踏みしめているのも間違いない。勝てないという苛立ちを感じる一方で、ウルグアイとの80分間のバトルの中で、実際にチームがどんなパフォーマンス、進化を見せているかを、冷静に見ていくことも重要だ。

 立ち上がりはフィジカルで勝るウルグアイに接点で押し込まれる局面が多く、開始7分に先制トライを許している。だが、キックオフからの日本の防御を見ると、接点への集散は、スピード、2人で重圧を掛けるダブルタックルと、取り組んできたプレーをしっかりと見せている。序盤戦ではいいパフォーマンスを見せるのは、新体制での初陣となった6月のイングランド戦からの特徴でもあったが、2人で確実に相手を捕える意識や、密集に入る時の連動性など、日本が目指すプレーの精度は地道にアップしている。

 10分の自分たちの初トライの場面でも、攻撃をスローダウンさせたいウルグアイの防御に対して、連続ラックで密集に参加する2人目、3人目の集散のスピードで競り勝ち、日本らしい速い攻撃のテンポを作り出して、最後はNo8姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)のパワーでインゴールをこじ開けている。5分後にはミッドフィールドでの相手の8次攻撃にダブルタックルを連発させて、防御を崩さないまま守り続け、最後は姫野が今度はジャッカルでPKを奪い取っている。この日の戦いぶりを、エディーはこう振り返る。

「先ずブレークダウンが良かった。まだスタッツは見ていないが、ターンオーバーも出来ていた。スピードや、緊急の対応も良かった。とりわけサポートプレーで速さが見られた。厳しい状況での反応や対応力も評価出来る」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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