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ラグビー日本3連敗、続く試練のテストマッチ 強国に学ぶべきは選手然り、日本ラグビー全体でもある 

痛感させられるのは「チームリーダーの不足」

 長田のキック処理の指摘は、他の選手にも当てはまる。先制トライでも相手キックを処理できなかったツイタマは、前半18分の日本のキックを自陣22m内へ蹴り返されたシーンで、捕球まで2バウンドを許している。直後のフランスの3個目のトライシーンでも、グラバーキックの処理が出来ずにトライを奪われている。フランスがキックを使ったアタックを積極的に仕掛けてきたことからは、事前にFB経験が豊富ではないツイタマのキック処理能力、そして日本のバックスリー(WTB、FB)のキックに対する組織的な防御の不安定さを事前に分析してきたことが読み取れる。このような状況を踏まえて、早稲田大学時代からゲームを読み解く能力では群を抜いていた長田は、後悔だけではなく、これからどう対応するべきかも前向きに語っている。

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「キックのところでいうと、バックスリーがしっかりコネクト(連繋)していく部分(が重要)。1つ目のトライでいうと僕が後方から上がって、他の選手はカバー出来なくて取られた。そこは、コミュニケーションで対応出来る部分なのかなと思います。相手キックからのカウンターで選手が孤立していたシーンもあったが、全員がしっかりと返ってコネクトしながらアタックをしていく、1人にしないことがとても大事だと思うし、解決できる部分もかなりあると考えています」

 おそらく、ここまで書いてきたキック処理については「何故それが出来ないのか?」という疑問を感じる方もいるだろう。すこし気の利いたチームなら、高校生でもしっかりと組織的なキック処理、そのためのポジショニングは取り組んでいるはずだ。だが、そこは代表チームの難しさだろう。相手のキックに備えるためにWTB、FB、SOらが、どんなコンビネーションを組むのか、誰が前方へ上がり誰がカバーするのか、どんな立ち位置を取るのかは、チーム、指導者によって変わってくる。ましてや、今回のゲームならフランス代表という強烈なハイプレッシャーを掛けてくるチームが相手だ。日本はメンバーの入れ替わりも多い中で、準備不足、連携不足を認めざるを得ないが、このような状況の中で痛感させられるのはゲームリーダーの不足だ。

 戦況を読み、相手が何を狙っているのか、どう仕掛けてきているのかを、より早い時間で理解し、チームに共有させる人材が十分ではないのは明らかだ。そのために、チーム始動時には35歳だったFLリーチマイケル(BL東京)が主将に選ばれ、リーチ離脱の後は34歳の立川理道(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)がチームを率いてきたが、スコッド全体の顔ぶれを見れば、大きく世代交代にシフトを切る中で、PR稲垣啓太(埼玉WK)、FLピーター・ラブスカフニ(S東京ベイ)、代表を引退したSH流大(東京サントリーサンゴリアス)、現役引退のHO堀江翔太(埼玉WK)のような経験豊富で、戦術的な判断、メンタル面での洞察力に富んだリーダーがあまりにも少ない状況が、チームの“幼さ”に繋がっているのだろう。

 フランス戦に限れば、5トライを許した0-31の前半で勝負はついている。この、スコアの奪われ方にも日本の脆さが滲んでいる。前半の全てのトライをみてみると、下記のような起点から奪われている。

トライ1(4分) フランス陣22mライン手前の相手キックカウンター
同 2(10分) 日本陣10mラインのラックでのターンオーバー
同 3(19分)      同上
同 4(28分) フランス陣10mラインでのラックターンオーバー/PKから速攻
同 5(34分) 日本陣でのラインアウトミス→相手ラインアウトからサインプレー

 このように、自分たちの反則、ミスから切り返されたような失点ばかりで勝負が決してしまったのが、この日の敗戦理由となった。確かに日本のスピード重視のアタックは常にターンオーバーのリスクが付き物と言ってもおかしくない。だが、このゲームでの失点をみると、ボールを奪われてからそのまま一気に奪われたものばかりではない。戦況を判断して、適切な連携を取ることでトライ自体ないしは、容易にインゴールを割られることは回避出来た時間があった失点も多かったのだ。これらの失点シーンからは、先に触れたキック処理も含めて、ピッチに立つ日本代表15人のコンセンサス、コミュニケーションの不十分さを痛感させられた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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