2軍のタイトルホルダーに「指名漏れ」続出の謎 実力証明の裏で失う“1年”異色経歴の選手に大きな壁
異色経歴で重ねる年齢、選手起用で首脳陣にジレンマも
プロ野球選手の引退年齢は平均28~9歳。25歳前後のドラフト候補は、選手としてのピークをすぐ越えてしまうという見方との戦いになる。2軍球団にやってくる選手で多いのは、部員が3桁を超えるような大学の野球部でアピールできずに埋もれてしまった選手や、基本的に育成指名がない社会人野球のチームでどうしてもプロに行きたいと願った選手。そうするとすでに“適齢期”を過ぎていることも多く、NPB球団は食指を動かしづらくなる。
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くふうハヤテでは、増田将馬外野手のケースがこれにあたるだろう。今季ウエスタン・リーグでは31盗塁でタイトルを獲得し、打率.297もリーグ2位だ。ただ1998年生まれで、中部学院大から社会人野球のジェイプロジェクト、独立の徳島を経てくふうハヤテ入りしたため、来季中に27歳を迎える。赤堀元之監督も「2軍ではこれだけやれているわけだし、右打ちでスピードのある外野手は球界全体を見ても貴重。あとは年齢をどう評価されるか…」と話していた。
また、くふうハヤテもオイシックスも、NPBの2軍に勝ち、地元のファンに支持されることがチーム存続には必要不可欠。そうなると、魅力はあっても穴が大きい原石のような選手を起用しづらいという側面もある。
今季オイシックスを率いた橋上秀樹監督は「まずは勝つという目的の中で、選手起用も選択しているつもり」と話し、赤堀監督は「選手を育てるのが大きな目的だけれど、勝てば育成になるという考え方でやっている」と話す。くふうハヤテの中村勝投手コーチは「やっぱり試合で起用するとなると、コントロールのいい選手の方が使いやすい。それは上の世界に行っても同じだと思うんですが……」。チームの勝利と、選手の魅力を引き出すことには相反する面もある。首脳陣は大なり小なりジレンマを抱えている。
橋上監督は、チームが独立のBCリーグを戦っていた時代からチームを率いてきた。今季2軍への参加にあたっては、選手の「わかりづらい」魅力が可視化されるのではとみていた。球速や回転数といった指標だけでなく「ボールはそれほど速くなくても、なぜか打てない」といった側面が、NPB球団と対戦することでスカウトに伝わり、関心を持ってもらえると期待していた。ただいざ迎えたドラフトでは、2軍で十分に通用した選手よりも、ひとつでも若く、伸びしろが見える選手のほうが評価されるという現実があった。リーグ活性化を目指した試みは、まだ道半ばといえそうだ。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)