ドラフト指名目指す30歳、2軍球団で気づいた投球の“真髄” 年齢と引き換えにつかんだ武器「失敗した数が…」
球速を捨てても速球派でいられる…データに出ない唯一の要素とは
今季途中、そのカーブの軌道が変わり、打者にとらえられるようになってしまった時期があった。「腕が横振りになっているよ」という中村勝投手コーチの指摘で、原点に戻ることができたという。原因は、知らず知らずのうちに球速を出そうとしていたからだ。
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カーブにしっかり働いてもらうためには、かつて追い求めた球速を捨てなければならない。そんな“究極の選択”にも、葛藤はなかったという。「自分を受け入れて特徴を活かせば、真っ直ぐが140キロちょっとでも抑えられる。野球の面白さだと思いますし、何物にも変えがたい経験です」。
現在、投球を数値化する試みは猛スピードで進化している。ボールの回転数や変化の方向などあらゆるものが可視化される中で、平間に言わせれば数値に出ていないものが一つだけあるという。
「球威です。球速とは全く違いますし、手元で“来ている”ボールにバッターが刺されるのは、球速に関係なく起きます。モーションも球威を感じさせる一因です。球速を捨てたら速球派じゃないのかと言えば、そうじゃない。上原浩治さんや山本昌さんを見ていればわかります。威力が伝わっていれば速球派だと思うんです」
平間の今季成績は34試合に登板して2勝7敗2セーブ、防御率3.82。形のないところから2軍参入を果たしたチームで、先発も中継ぎも、抑えもこなした。序盤戦はリリーフで抜群の安定感を見せ、20試合に投げたところでの防御率は0.66。最終的な登板数はチーム3位で、不可欠な存在だったのがわかる。
「僕より将来的にすごい球を投げる投手は、ここの若手にもいっぱいいると思います。でも経験から得た安定感は、僕にしかありません。先発、中継ぎ、抑えの経験が全部あって、怪我を一度もしたことがありません。どんな時でも、パッと行けと言われれば投げられますし。そのための準備もできる。NPBの12球団には、困ったときの投手だと見て頂ければありがたいですね」
レベルが上がれば上がるほど感じられる野球の奥深さ。突き付けられた課題を解決しながら、平間はあくまでもNPBを目指し続ける。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)