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「僕の拳には想いが乗っている」 対戦相手の死、12年前の雪辱…執念で掴んだ堤聖也の世界王座

堤聖也【写真:中戸川知世】
堤聖也【写真:中戸川知世】

対戦相手が試合後に死去「僕への誹謗中傷もあるけど…」

 昨年12月、穴口一輝選手(真正)からダウンを4度奪う3-0の判定勝ち。しかし、相手は試合後に意識を失い、右硬膜下血腫により緊急の開頭手術を受けた。意識が戻ることなく、2月2日に23歳で死去。堤は通夜、告別式に参列した。「家族のことを思うと本当に言葉が出ない。僕は何も言えない」

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 亡くなる直前にこの試合が2023年の年間最高試合賞(世界戦以外)に選ばれた。「彼は本物でした。やった僕らにしか感じられないこともある」。2人で獲った賞。「毎日思い出す」と過ごしてきた。

「ずっと覚悟してボクシングをやっています。試合前から僕は『これで終わるかも』と考えている。こういう言い方はあれですが、彼に問わず、戦ってきた相手との人生の潰し合いだと思ってボクシングをやっています。彼に問わず戦ってきた相手への想いはあって、彼へのその想いはより強いものがある。

 僕の拳には彼ら(全ての対戦相手)の想いが乗っているので、それも全て覚悟した上で今後とも僕のスタイルのボクシングを皆さんに見せていきたい」

 決して、リング禍を肯定するわけじゃない。「ボクシングって何なんだろうと、いろんな人が考えたと思う」。堤の頭にも駆け巡った。

「ボクシングをやっている奴らって、みんなそれぞれ想いを背負って、人生を背負ってやっている。そういうメンツの中で僕も戦ってここにいるし、これからそういう強い王者たちに挑んでいくわけで。そこで勝つ、ベルトを獲ることに大きな価値があると思っています。

 ボクシングを本気でやっている奴らのぶつかり合いって、殴り合いですけど、そのぶつかる姿に人は美しいという感情を抱いてしまう。それがボクシングの魅力だと思うし、その競技を今もこうやって続けられることに凄く感謝して、誇りに思います」

 競技に対して否定的な声が上がり、心無い声もぶつけられた。「僕への誹謗中傷もあるけど、気にかけてくれる人、心配してくれる人がたくさんいる」。そばにいる仲間ほど、励ましの言葉も何もない。いつも通り。それが嬉しかった。

 魂で攻め続け、9500人の心を揺さぶった36分間。世界王座を獲り、リングで上を見た。会見で問われた穴口選手への想い。目の前の黒いベルトを見ながら、短く言った。

「まあ……報告はしたいっすね。ここで言うことではないかな」

 バンタム級の4つの世界王座は日本人が独占中。誰が相手でも、また見たいと思わせる激闘だった。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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