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「僕の拳には想いが乗っている」 対戦相手の死、12年前の雪辱…執念で掴んだ堤聖也の世界王座

ボクシングのWBA世界バンタム級(53.5キロ以下)タイトルマッチ12回戦が13日、東京・有明アリーナで行われ、挑戦者の同級2位・堤聖也(角海老宝石)が王者・井上拓真(大橋)に3-0で判定勝ち(114-113、115-112、117-110)した。  世界初挑戦で悲願を達成し、高校時代に敗れた宿敵に雪辱。8か月前には対戦相手のリング禍を経験した。「ボクシングって何だろう」。全ての対戦相手の想いを拳に乗せ、その答えを表現しながら掴んだ世界のベルトだった。戦績は28歳の堤が12勝(8KO)2分け、3度目の防衛に失敗した28歳の拓真が20勝(5KO)2敗。観衆は9500人。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

世界王座を奪取し、ベルトを掲げる堤聖也【写真:中戸川知世】
世界王座を奪取し、ベルトを掲げる堤聖也【写真:中戸川知世】

ボクサー堤聖也が執念で掴んだ世界王座

 ボクシングのWBA世界バンタム級(53.5キロ以下)タイトルマッチ12回戦が13日、東京・有明アリーナで行われ、挑戦者の同級2位・堤聖也(角海老宝石)が王者・井上拓真(大橋)に3-0で判定勝ち(114-113、115-112、117-110)した。

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 世界初挑戦で悲願を達成し、高校時代に敗れた宿敵に雪辱。8か月前には対戦相手のリング禍を経験した。「ボクシングって何だろう」。全ての対戦相手の想いを拳に乗せ、その答えを表現しながら掴んだ世界のベルトだった。戦績は28歳の堤が12勝(8KO)2分け、3度目の防衛に失敗した28歳の拓真が20勝(5KO)2敗。観衆は9500人。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 チャンピオンベルトを子どものように抱きしめ、天に掲げた。汗と、血と、涙が混じった傷だらけの顔。堤の声は揺れていた。

「この日の、この瞬間のためにずっと生きてきた。中学生の時、内山高志さんのベルトを持たせてもらった。だけど、それ以来自分のベルトを巻くまでは、どんな機会があってもベルトに触れないと誓いを立てていた。今日、やっと巻けました」

 相対する敵は12年前からの標的。互いに高校2年だったアマチュア時代、全国高校総体準決勝で敗れた拓真だ。リングに立って湧き出た弱気の虫。「僕はずっと弱いままなのか。ずっと怖かった」。がむしゃらに前に出た。

 王者の巧みなボディーワークにさばかれる。自分が体勢を崩した瞬間、拳が飛んできた。「凄く上手い。また自分を止める男なのか。何回も、何回も弱い心が出てきた」。7回に左まぶたをカット。「心の火を灯して戦った」。不格好かもしれない。それでも攻め続けた10回。ついに左が当たった。倒れる王者。「行かないと」。執念に満ちた拳は最後まで緩まなかった。

 奪ったダウンは何ラウンドだったかすら覚えていない。それほど全身全霊だった。

 高卒でプロの連勝街道を走った拓真。堤は大学を経て後を追った。「人生の恩人です」。涙をため、声を震わせながらライバルの背中に感謝する。

「やっぱり拓真がいなかったらプロボクシングに来ていないと思う。高校生の時からずっと考えていた。リベンジしたいって。拓真からすれば、僕はインターハイで試合をした普通の同い年のやつ。それ以上でも、以下でもない。12年間ずっと片思いをしていた。追いかけて、追いかけて、今日超えることができた。本当に戦えてよかった」

 8か月前には訃報が届いた。

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