大谷翔平と井上尚弥に通ずる“記録無視”の姿勢 今、最強のアスリート2人から聞いた同じ言葉
かつて井上尚弥も迷わず回答「引退する時に…」
今回、記者は初めてMLBの取材機会に恵まれたが、普段は国内でボクサーの取材が多い。2018年から見てきた井上は、派手な試合内容もさることながら常に何かしらの記録がトピックになった。世界戦9連続KOなど「日本人初」の冠は書ききれないほどあり、通算23勝は現役世界最多でもある。
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世界2人目の2階級4団体統一の偉業を達成し、このままのペースでいけば来年末にも世界戦27連勝に到達する。あのフロイド・メイウェザーらを超える世界記録だ。「現役だけでなく、歴史上でも最高のボクサー」と評価する海外記者や関係者がいるほど、全てを兼ね備えた最強選手になった。
そんな井上が「昔から言っていますけど、記録やベルトはさほど興味がない」と話したことがある。興行を盛り上げるため、記録更新に意欲的な発言をする時もあるが、記録はモチベーションの中心にはならない。「強さを追い求めたい」と勝利を目指し、自分の極めた競技でファンを魅了したいという気持ちこそがキャリアを支えてきた。
記録への意識を問われた時のこと。迷わず答えていた。「引退する時、自分のキャリアを振り返って何を思うか。今は特に考えることではないと思います」。自分のやるべきプレーに集中するだけ。勝利以外のことを考えるのは引退してから。この日の大谷と同じ意味の言葉だった。
20以上の競技で多くのトップアスリートを取材してきたが、確かに「記録は気にしない」という言葉はよく耳にする。ただ、実際に頭から完全に捨て去り、プレーにだけ集中するのは難しいのだろう。大谷と井上ほどの注目を浴びながら、結果を出し続けた選手はいない。2人には共通した勝利第一の姿勢を貫く術がある。
世界に名を刻む2人の日本人アスリートが同じ時代を生きている。ユニコーンとモンスター。どちらにも手を拝まずにはいられない。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)