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「大谷翔平を思い起こして下さい」の真意 ついに初勝利も…熟成途上露呈したラグビー日本代表の課題

エディーが語った「大谷翔平を思い起こしてください」の真意

 カナダ戦前の後の会見で、エディーと、こんな質疑のやり取りをした。

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「テストマッチでは勝利がマストであると同時に 今のチームの攻め急いでいるプレーなどを見れば、PNCで組織としてどれだけ精度を高められるかが1つの大きなテーマではないか」

 エディーの答えは明快だった。

「そうだと思いますし、一貫性というのが大きな課題だと捉えています。どうしても試合中に興奮して盛り上がってしまう部分と失望してしまう部分が、それぞれの選手の状況判断に影響を及ぼしているのは否めない。(カナダ戦も)どうしてもパスを何とかつなげようとしてしまうシーン、例えば矢崎がラインブレークした後につまらないパスを放ってしまったプレーを見れば、正直テストマッチプレーヤーとしては、してはいけないことだと思います。しかし本人たち、若い選手たちはスキルを磨いている途中です。ここは我慢であり、忍耐力が必要な部分だと思っています。だから自分としてはプレーヤーを見守り、次の課題を見つけていくことができると思います」

 そして、指揮官はメジャーリーグで大活躍する日本人選手を例えに挙げた。

「大谷翔平を思い起こしてください。若手の時はまだまだ何でも打ちたい、投げたいと思っていましたが、彼がこれほど偉大なプレーヤーになったのは、何をしっかりと打つのか、バッターボックスで何をするべきか、何を見逃していいかという明確な判断ができるからだと思っています。いま大谷は30歳で経験を身につけています。我々はまだ発展途上だと思っていますが、必ず経験は身についていくのです」

 さらに、カナダ戦前の会見で指揮官が語った2027年W杯までの“ロードマップ”が、現在このチームが何にプライオリティーを置いているのかを物語っている。

「W杯までの最初の3年間に関しては日本のラグビーの基盤を作っていく時間だと考えています。現在はどうしても経験不足ということは否めないが、ここから経験とキャパシティを積み上げながらテストラグビーが出来るチームになっていきたい。もちろん試合をするからには全てのゲームで勝ちにこだわっていきたい気持ちは変わりませんが、最初の3年間はチームを育成しながら勝利を求めるという意味で、私は2つの責任を果たさないといけないと認識しています」

 従来、代表チームは、国際舞台で戦える素材をいかにチームとして戦える組織に仕上げるかが大きな目的だ。国内でも有数の食材を集めて、いい料理を作るようなものだ。エディージャパンでは、本来は育成チームやU20などエイジ代表で鍛えられて代表昇格を目指す世代、レベルの選手も「代表」に組み入れて強化を進めている。このような強化の在り方に対する賛否の声も聞こえてくれば、リーグワン選手の中からも「何故、大学生や若手が選ばれて実力が上のリーグワン選手が選ばれていないのか」という不満や疑念の声が聞こえてくるが、この議論はあらためてテーマアップしていきたい。

 いま重要なのは、実績の有無に関係なく実際にエディーが選んだ選手たちが、PNC期間中にどこまでチームとして熟成し、再びトップレベルの強豪と渡り合えるチームに成長できるかだ。世界21位のカナダ相手には、まだまだ課題を露呈しながらも、強みのスピードを武器にしたアタックでトライを獲り切るラグビーは見せることが出来た。PNCの残る3試合で、さらに一貫性を持ったチームに仕上げることが出来るのか。秋に待ち受けるニュージーランド、フランス、そしてイングランドというビッグネームを本気にさせるための試金石となる戦いが続く。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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