40歳シーズンで果たした“NPBデビュー” 不惑のレジェンドが一塁ヘッスラを敢行する理由「年齢は関係ない」
独立リーグで残した大記録…積み重ねて目指す1000安打
重ねた年齢が、さまざまな意味で立ちふさがることがある。だからこそ、ここまで現役を続けられたことへの感謝は強い。「いつ切られてもおかしくなかったと思うんです。周りの人、球団の人がここまで残してくれたことに感謝しかない。僕の年齢では、ふつうこのレベルで野球をできません」。稲葉はBCリーグでまさに“レジェンド”と言える成績を残してきた。
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昨季までの17年で、通算933試合に出場し958安打。年間の試合が70試合ほどという、NPBのちょうど半分の規模のリーグでは、まさに大記録だ。
参加するリーグが変わったことで、稲葉がこれから重ねる通算安打は2つのリーグにまたがった“参考記録”となる。それでも残り34本まで迫った「1000」は譲れない。同学年で、今も群馬に在籍する井野口祐介が、史上初のBCリーグ通算1000本安打を達成したのも、心を奮い立たせる原動力となっている。
稲葉の打力は、独立リーグでは突き抜けていた。2011年には72試合で100安打、打率.370を残して首位打者とMVP。それでもNPBからのお呼びはかからなかった。「やっぱり、実力がなかったんですよ。走攻守でどうしても波があった。あと、何か一つ突き抜けないと」。2軍とはいえ、NPBの選手と当たり続ける今季。自分に足りなかったものも見えてくる。
橋上秀樹監督にとって、稲葉は安田学園高(東京)の後輩でもある。2011年に、初めてこのチームの指揮を執ったときと比べ「丸くなった感じはするかな。性格も体も」と笑いながら、チームに与える影響の大きさを口にする。
「独立で、ずっといつかはNPBと思ってやってきた選手。ここでやらせてもらえることへの思い入れは、稲葉が一番強いんじゃないかな。自分の集大成だと思ってやっていると思いますよ」
記録に挑める喜びと、チームへの感謝を胸に打席に立つ。「レベルが上がった投手と当たって、残り30何本は大変ですよ。1打席が本当に大切」。絞り出す言葉に重みと、喜びがにじむ。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)