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「ラグビーが野球に並ぶくらい有名に」 最強野武士軍団、エディージャパン…日本ラグビーの“これから”に託す思い

「ラグビーが野球に並ぶくらい有名になって欲しい」

「多分、僕らがやってきたのとは全く違うラグビーをすると思うんですよね。超速ラグビーですよね。これを、どれだけチームが見せられるかだと思うんです。ファーストシーズンは結構時間もない中でイングランドら強豪との試合ですから、どういうふうに大きな枠を作って、こういうラグビーするんだぞというのを見せられるかが大事ですよね。そういう1年になると思うし、そこが見たいですね。見せることが出来たら、今後どんどん成長していくやろうなと思います。僕らがやって来た2015年と同じような、19、23と同じラグビーしてたら、多分先は見えないと思うんです。だから、そこに関してはエディーさんに替わって良かったのかなと思いますね。選手目線からしたら“味”が大きく変わるので、モチベーションも全然違うと思います。これって各チームも同じで、パナソニックももうちょっと味変せなアカンやろなと、僕はホンマ数年前から思っていたんです」

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 堀江の言葉の中に、プロスポーツとしてのラグビーで、最先端で戦ってきた選手として感じた現実が浮かび上がる。トップクラスの戦いでは、チームも選手も日々バージョンアップしていかなければ勝てない時代を迎えている。進化が無ければ上位チームに追いつけないし、どんどん追い抜かれていく。23年大会をみても、日本が19年に辿り着いた「8強」というポストを失い、代わってフィジーがその座を実力で掴んでいる。今年7月の代表戦でも、退場処分などの不運もあったが、日本はランキング下位のジョージアに敗れて順位も逆転している。昨日までの自分やチームを脱皮して、今日はどこまで進化できるかというレースが加速する中で、堀江は、どこまで選手をその気にさせるかも重要だと指摘する。

「そうなんですよ。いろいろ変えていかないと勝っていけないですし、やっぱり選手のモチベーションがね、結構キーだと僕は考えているんです。選手をやりたいと思わすような練習だったり、これやったらいけるというような戦術戦略を用意してあげた方がいい。それが出来るスタッフがおったほうが、絶対いいと思いますね」

 堀江の思いの中には、いまの若い選手たちの能力が間違いなく進化しているという肌感覚もある。

「選手たちは、みんなもうアスリートなんですよ。アスリートだから、普通に教えて普通にやれば大抵のことは出来るし、普通に言ってくれれば、怒らんでも出来るんですよ。だからもう多分、重要性も分かっているだろうし、後はどれだけ言われたことに対してそのまま丸々じゃなくて、どこかでちょっとこの戦略だったら、こうやったら上手くいくだろうなとか、これやったら俺の色がつけられるだろうなとかいうことを、どんどんプラスしていけば絶対チームは良くなると思う。選手も、エディーさんとしっかり話をして、色々と揉んでいくといいですよね。もちろん代表というのはコンバインドチームなんで、言われたことやるのが大事だという考え方もありますけど、そこからどう自分の色を出していくかという肉付けをしていくことで、チームの味付けがどんどん良くなると思います」

 現在リーグや代表で活躍する選手たちが、自分たちの世代以上に進化している現実を認めながら、彼らが指揮官としっかりとコミュニケーションを取り、自分たちの考え方もぶつけて、寄せ集めながら代表チームの個性を作り上げていく。こんな日々の取り組みが、15年のブライトンの奇跡を呼び起こし、19年の躍進を後押ししたのだ。

 最後に、日本ラグビーの「これから」への期待と、自らの思い浮かべるアイデアを聞いてみた。

「競技としての進化はもちろんですが、ラグビーが野球に並ぶくらい有名になって欲しいですよね。そのために、日本独自のリーグとかをやってもいいかなと思います。例えば1年中ラグビーが出来るような環境があってもいい。リーグワンはいまシーズン終わって休止している状況じゃないですか。でも、こういう期間にちょっとリーグ(13人制)ラグビーをやらせるとかね。それが終わったら次は15人制で、というような。適当にお遊びとしてじゃなくて、しっかりお金も取ってやればいい」

 実際に埼玉WKはプレシーズンやシーズン中でも、強化の一環として11人制ラグビーを導入しているが、従来はウインタースポーツとされていたラグビーを、7人制など異なるコンテンツを1年中ファンに提示して、より親しみを持ってほしいという思いがある。同時に、国内リーグだけに捉われないチームの挑戦にも目を向けている。

「例えば国内チームが海外に出ていくことがあっても面白いかなと思います。単体でアメリカやヨーロッパのリーグに参加することもあってもいいかなという。何年後かには、リーグワンに戻ったりとか、そんなことが可能なら面白いと思います。今は企業スポーツに毛が生えたぐらいで、まあ始まりという状態なので、もっとプロっぽく、もっとエンターテインメントがあるように出来ればいいですね」

 プロとして選手もチームもさらに成熟して、従来にない取り組みを期待する堀江だが、それを促すためには、リーグやラグビー協会も従来以上に柔軟性を持った運営や規約の下でチーム、選手、ファンと向き合うことが重要だろう。38歳まで日本と世界のラグビーの中で揉まれ、駆け抜けてきたラスボスは選手としての挑戦にはピリオドを打ったが、その類を見ない実体験に基づく経験、知見から日本ラグビーが学ぶものはまだまだありそうだ。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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