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堀江が身をもって知る埼玉WKの強さ
堀江の言葉と埼玉WKのプレースタイルから判るのは、「いいチーム」「いい選手」というのは、プレーや考え方に柔軟性を持つことであり、トータルなラグビーが出来ることだ。試合で刻々と変化する戦況の中でも、選手誰もが様々な対応を出来ることが、このチームの強さの背景にある。
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「僕の中で、いい選手というのはそういうことなんです。『これだけ』というのじゃなくて、色々なポジションのことをこれまで学んできた。そういう トータルなラグビー、頭の中をクリアにしてプレー出来る選手になってほしいなと思いますね」
チームの魅力、キャラクターからもう一歩踏み込んで、埼玉WKの強さについても、堀江は言及している。
「これはね、選手の意見だったり、選手主導で練習を作ったりという部分がありますね。それを聞いてくれて、うまいことコントロールしてくれるスタッフ、人材がパナソニックにはいる。僕のトレーニング自体を取っても、ここのS&Cメニューは(やらなくていいと)許してくれるとか、こんなサインプレーしたらいいんじゃないか、こういうディフェンスやりたいんですけれどということに、耳を傾け、取り入れてくれるところが強い理由じゃないかと思っています」
柔軟性や選手の意見も聞きながらチームを強化していくことで、選手側も自主性を培っていける。こんなチーム運営が埼玉WKの魅力であり、強さの源泉でもある。その一方で、選手たちもリーダーの下でしっかりと一体感を持って戦う姿勢が、埼玉WKのチームとしての懐の深さを創り出している。
「コーチやリーダーが、しっかりと戦術、戦略を持ってきて、それをチームとしてやろうとするのもいい所かな。愚痴や、あっちの方がいい、こっちの方がいいじゃなくて、リーダーがそういう不満がないように、しっかりミーティングをしているし、その場で、これはしていいのか、いけないのがという会話が生まれるのが、このチームです。選手主体で考えていくことが多いのも強さの秘訣でしょうね」
NZでも名将と呼ばれるロビー・ディーンズ監督が就任したのが2014年(当時の肩書はヘッドコーチ)。この指導者の手腕がチームの躍進を支えているのは間違いないが、堀江はコーチンググループの役割分担や立ち振る舞い見つめてきた。
「実は、あまりいいシーズンじゃない時は、ロビーさんが現場に下りてきて、こうやああやとやっていたんです。でも、昨季もそうですけど、いい状態のときは、監督として上にちゃんと居て、現場はコリーさん(ホラニ龍コリニアシFWコーチ、元日本代表No8)らが動いているんです。それをロビーさんが上から見て、意見をどんどん取り入れて、このプレーを使うか、使わないかというのを振り分けていく。それが上手い事いってるかなという感じはしましたね」
チーム内の風通しの良さ、選手それぞれが意見を言い易い柔軟性があるときは、チームの成績も上がっているようだ。そんな土壌は、ディーンズ監督就任以前からこのチームで受け継がれてきた。
「昔からそんな感じだったんですよね。例えば、オフが明けるタイミングでいつもフィットネステストをしていたんですけど、コレ本当にいるのとかいう声が出てきたんです。2週間休みがあって、そのオフ明けのテストだったんですけど、それはオフの後半の1週間はちゃんと練習をして、休むなということなのかという意見をコーチングスタッフが聞き入れて、だったらテストのタイミングを後にずらそうというのがウチなんです」
背景にあるのは、前身の三洋電機時代から様々なチームを渡り歩いてきた選手や、大学途中でドロップアウトした選手が集まって来た伝統だ。そんなさまざまな背景や価値観、経験値を持つ選手も受け入れて、柔軟にチームを運営してきたことも、このチームのポジティブな個性になっている。
「だから、選手の意見を聞くことという伝統が無くなってしまう時が来るとしたら、それは怖いですね。例えばロビーさんが辞めて、新しいコーチ陣が選手の声を聞いてくれず、チームからも意見が出ないようなことになると大変やなと思います」
チームは常に優勝候補とされながら、リーグワン初年度の優勝の後は2シーズン連続で決勝戦で敗れている。2007年度の日本選手権初制覇までも、勝てそうで勝てない時代が続き“シルバーコレクター”と呼ばれていたチームだが、堀江は2シーズン連続の決勝敗退をどう受け止めているのか。