私、茂怜羅オズです “砂の日本代表10番”が挑む「選手兼監督兼クラブ代表」の道
モノレールの車窓から見つけた練習場「もう、ららぽーとに行かず交渉に…」
会ってもらえるのはいいが、金額を出してスポンサーになってもらうのはハードルが高い。しかも、日本では認知度の低いビーチサッカー。一般的な宣伝・広告効果が決して高くないことは理解していた。
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「サッカーみたいにテレビに映るとかニュースになるとか“見せるもの”が正直ないので、私たちは夢があると言った。日本一だけじゃなく、世界一になりたい。自分は世界クラブ選手権にバルセロナの選手として優勝している。その夢のためにはスポンサーがないと強くならないし、活動できない。私たちの夢を聞いて頑張りを見てもらい、スポンサーするより応援してもらう感じ」
茂怜羅の情熱に心打たれた企業の支援が集まり、選手たちに費用の負担なく、遠征に出られるようレベルまでなった。しかし、最も大きな課題だったのは、練習場の確保だった。
「東京にはビーチもない、砂のコートもない。でもある日、立川にあるららぽーとに行く時、モノレールに乗ったら窓からバーベキューをやっている場所が見えて『なんで、こんなところにビーチがあるんだ?』と。駅に着いたらもう、ららぽーとには行かず、そのビーチに行って交渉した。そうしたら営業前の8~10時なら練習していいですよ、と」
偶然、目の当たりにしたビーチ。それが、現在の拠点となっている立飛ビーチだった。インスタ映えする日本最大のフェイクビーチで普段は一般客で賑わっているが、この場所ならビーチサッカーの練習に最適。スポンサーとして契約し、費用もかからない。ゴールを買って練習し、今年6月にビーチサッカー場を作られた。環境面は劇的に変わった。
情熱的に動き、道を切り開いてきた茂怜羅。しかし、敢えて現役のうちに過酷な二足の草鞋を選んだのはなぜだったのか。
「海外を見て、日本を見ると、もう十数年経っているけど、またまだと感じるから。まずは大きな大会で面白い競技と見せたい。なでしこジャパンみたいにW杯で結果を残したら、もっと早く知ってもらえるきっかけになる。いつか日本のビーチサッカーが海外みたいにテレビで見られるようになったらうれしい。海外のスポルティング・リスボンというポルトガルのクラブはフットサル、ビーチサッカーもあって運営の仕方も上手。東京ヴェルディも海外みたいにやりたい」
理想として描いているのは東京ヴェルディのように、Jクラブにビーチサッカークラブを持つ流れが広がっていくことだ。
「東京ヴェルディは昨年、立ち上がったけど、Jリーグでビーチサッカーを持っているクラブはなかった。でも、海外はサッカークラブが持つのは当たり前。バルセロナもそう。日本の皆さんにビーチサッカーを紹介する時、名前のあるチームじゃないとなかなか知ってもらえない。でも『東京ヴェルディ』と言えば知ってもらえる。海外もそうやっている。テレビ中継もビーチサッカーの『東京ヴェルディ対FC東京』みたいに実現したら、すごくファンにもわかりやすいと思う」